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zoom RSS 愚者のエンドロール (米澤穂信)

<<   作成日時 : 2012/05/27 23:03   >>

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満足度3 ★★★

角川文庫
英題 Why didn't she ask EBA ?
初出版 2002年
読んだ回数 1.5回







角川文庫−裏表紙の紹介文

「わたし、気になります。」 文化祭に出展するクラス制作の自主映画を観て千反田えるが呟いた。その映画のラストでは、廃屋の鍵のかかった密室で少年が腕を切り落とされ死んでいた。誰が彼を殺したのか? その方法は? だが、全てが明かされぬまま映画は尻切れとんぼで終わっていた。続きが気になる千反田は、仲間の折木奉太郎たちと共に結末探しに乗り出した! さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリの傑作!!


感想、みたいなもの

「やらなくてもいいことはしない。やらなければいけないことは、手短に」がモットーの「省エネ高校生」、折木奉太郎と学友達の、高校生活の日常の謎を描く、「古典部シリーズ」の2作目。

今回は、文化祭に出展するミステリー映画の未完成シナリオの結末を、奉太郎達が推理するというストーリー。

途中までの映像から推理して、いくつかの結末が提示されるのですが、その推理の落ち度を指摘し、最後には自分で推理した結論を出すことになります。

提示される推論がひとつづつ提示され、それが正しいのかどうかを判断していくという進行は、シンプルで読みやすく、「これでラストがビシッと決まれば、★★★★★もあり」という感じだったのですが、読み終わった時には正直「??」という感じで、どう落とし前が付けられたのか、ハッキリ言って、わかりませんでした。

結局、もう一度、最初から最後まで、軽く読み直してみたのですが、それでも、自分の解釈で本当に良いのかどうか不安になるという、かなりの残尿感を伴う読書でした。

−−−−−

作者のあとがきによれば、

本作はバークリー『毒入りチョコレート事件』への愛情と敬意をもって書かれました。

ということですが、『毒入りチョコレート事件』って、ミステリー好きなら必ず読んでいる、または、ストーリーを知っているという作品ではないと思います。



私はコダワリの人なので、結局、『毒入りチョコレート事件』を購入し、読んでみたのですが、本作の中の「何のことかわからないような描写」が、『毒入りチョコレート事件』をパロッたものだとわかって、ちょっとスッキリした部分もありましたが、読まなければ、あの気持ち悪さは解消しないわけで、やっぱり、「なんだかなぁ。」という感じでした。

また、本作には、「愚者のエンドロール」の他に、
「Why didn't she ask EBA ?」
という英語のタイトルがつけられています。



これはアガサ・クリスティーの
「Why Didn't They Ask Evans ? 」
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか ?」を捩ったものですが、この作品も、アガサ・クリスティーの作品の中では、ポアロものでも、マープルものでもない、知る人ぞ知るという作品なのです。

こちらは私も読んでいましたが、未読の人が、その隠し味的な風味を感じることはできるのでしょうか?



さらに、「シャーロックホームズの冒険」と「シャーロックホームズの事件簿」に収められた短編のリストが使われ、謎解きの、ひとつのポイントとなっています。

もちろん、「この3作品を読んでいないと本作を理解できない」ということではないのですが、他の作品を題材にした絡みが多すぎて、何だかモヤモヤした気分にさせられたのは確かです。

他にもタロットカードの意味が暗示的に述べられていたり、あまりにも仕掛けを欲張りすぎて、作者自身が消化しきれていない感じがしました。

私も最終的には、ネット上の感想などを調べてみたりして、自分なりの解釈を補完したのですが、この本が書かれた頃は、まだインターネットも今ほど充実していなかったので、当時の読者はモヤモヤ感を解消できなかったのではないでしょうか?

考えてみれば、第一作の「氷菓」でも、言葉遊びなど、「それって、普通は気がつかないでしょ。」というレベルのものがありました。

「古典部シリーズ」の第一作、二作と、売れ行きが悪かったというのも、このマニアックさが影響していたのではないかと思います。

私のブログは、ネタバレなしで書くのが基本なので、ここで、解釈については触れませんが、読まれて腑に落ちない気分の方は、いろいろと検索してみると良いと思います。

−−−−−

さて、メインプロットをもらった『毒入りチョコレート事件』を一言で表せば、「多重解決」ということで、「事件の謎解きは、探偵だけのものではない。いくつもの正解があって良い」というスタンスなので、そういう意味では、本作品は目的を果たしていると思います。

ただ私は、「読んでいる最中は何が何だかわからなくても、最終的には全てのピースがカチリと嵌って、全体の絵柄が完成する」という作品が好きなので、本作品は私の好みからは外れています。

ということで、途中まではかなり期待しながら読んだこともあり、満足度をどうするか悩みました。

わざわざ『毒入りチョコレート事件』を読んでみたりしつつ、少しずつ、腑に落ちない点をクリアしていく楽しみ(といって良いかは?)を味わえた感もあるので、そういう意味では★★★★★でもあるし、結果的に、不満がないと言えばウソになることを考えれば★★でもあるので、評価不能という意味で★★★にしておきます。

−−−−−

本作では、4人の象徴として、タロットカードが提示されます。

ちなみに、タロット(tarot)は、仏語・英語では、「t」 を発音せず、「タロ(ー)」と発音するそうですが、奉太郎(ほうタロー)という暗示なんでしょうか? 何だか色々仕込むのが好きな米澤穂信なので、疑心暗鬼になってしまいます。

カードの意味は、文中にも書いてありますが、絵柄については分からないので探してみました。これから読む人は参考にして下さい。

「愚者のエンドロール」という題名ですが、愚者のカードの意味を知っても、タイトルの解釈が良く分かりません。

エンドロールが流れるシーンが作中にあることはありますが、何か深い意味が込められているのでしょうか?

「わたし、気になります。」



千反田える
愚者(THE FOOL)
冒険心、好奇心、行動への衝動を表す。














伊原摩耶花
正義(JUSTICE)
平等、正義、公平を表す。















福部里志
魔術師(MAGICIAN)
状況の開始、独創性、趣味を表す。














折木奉太郎
力(STRENGHT)
内面の強さ、闘志、絆を表す。














−−−−−−−−−−−−−−−



文庫の表紙は、作中で廃村の劇場を訪れることから、劇場の舞台裏のような感じですが、教室のようでもあり、良くわかりません。

そして、2012年4月からアニメ版「氷菓」が始まったのに合わせ、現在、店頭には、アニメのキャラクター帯が表紙に巻かれたもの(右)が置かれています。

1作目〜4作目まで、レギュラーキャラ4名が順番に描かれていますが、「愚者のエンドロール」は、「伊原摩耶花」となっています。
(※他の四作の表紙は、氷菓の感想にまとめて載せてあります。)

アニメ表紙というのは、個人的に、レジに持って行くのに抵抗があるので好きではありませんが、元の表紙と比べれば、少なくともアニメ表紙の方が、目を引くし、売れそうな気はします。



最初に出版された「角川スニーカー文庫」の表紙(左)は、メルヘンチックなものでしたが、「氷菓」のスニーカー版(右)の、アニメ風の表紙とも雰囲気が異なり、統一感がない気がします。

−−−−−−−−−−−−−−−

2012年4月から、アニメ版の放映が始まっています。



2回ほど観てみたのですが、元々、アニメ向けの作品なので、違和感のない出来だと思います。アニメのタイトルは「氷菓」ですが、シリーズ順に物語が進んでいくようで、現時点ではまだ、「愚者のエンドロール」まで行っていませんが、この分かり難さを、どのように表現してくるのか楽しみです。

アニメについては、毎回、詳細な解説をしてくれるブログがあって、なかなか楽しめるのですが、「愚者のエンドロール」の回がアップされたら、下にリンクしようと思います。ただし、ネタバレ必至の内容なので、未読の方はご注意下さい。

Junk Head な奴ら

アニメのオープニングとエンディングです。





−−−−−
※ 6/12追記

「愚者のエンドロール」パートのアニメ放送が始まりました。
「氷菓」と同じように、「dailymotion」と、「Junk Head な奴ら」の解説をリンクしておきます。



Hyouka - 08 / Daily motion
氷菓 第8話 「試写会に行こう!」 / Junk Head な奴ら


Hyouka - 09 / Daily motion
氷菓 第9話 「古丘廃村殺人事件」 / Junk Head な奴ら


Hyouka - 10 / Daily motion
第10話 「万人の死角」 / Junk Head な奴ら


Hyouka - 11 / Daily motion
第11話 「愚者のエンドロール」 / Junk Head な奴ら



Hyouka - 11.5 / Daily motion
氷菓 第11.5話 「持つべきものは」 / Junk Head な奴ら


印象に残った言葉

「黄色い背表紙の文庫を幾つか読んだことがある。その程度だな。」

「ははぁ……。とすると、日本人作家だね。割と固いところだ。」


−−−−−

各自がミステリー読書歴を話すシーンで、曖昧にぼかして答えた奉太郎ですが、里志は、分かったらしいのですが…。

「普通は、分かんないだろ!!」

結局、「私、気になります。」ということで、書店で、背表紙が黄色の国内ミステリーを探してみたのですが、どうやら、講談社文庫の「島田荘司」ではないかと思います。ただし、正解かどうか分からないので、スッキリしません。

本作は、こういう無意味なほのめかしが多く、本当にイライラしましたが、他にも、

しかしまあ、いくら中身の酒が強かったといっても、ウイスキーボンボンの七つぐらいで潰れるかな……。

えるが、ウイスキーボンボンを食べ過ぎて、酔いつぶれるシーンがあるのですが、脈絡もなく、突然、ウイスキーボンボンが出てくるので、これは何の暗示だろうと疑心暗鬼になるのですが…。

結局、毒入りのウイスキーボンボンを7つ食べた被害者が死亡するという「毒入りチョコレート事件」に絡めた内容なのですが、本作の謎解きにはまるで関係のないお遊びでした。

まあ、分かった時の「そうだったのか!」という快感はありますが、「何で7つなんだろう?」と、喉にささった棘は、本作の中でちゃんと抜いて欲しいと思います。


※2014/02/03追記
wikipediaによると、黄色の背表紙の文庫とは「創元推理文庫」とのことでした。

私は、創元推理文庫の背表紙は「黄色」ではなく「クリーム色」という認識だったので、講談社文庫へ行ってしまいましたが、まあ、黄色と言えば黄色ですね。

そうだとしても何故、「日本人作家」とわかるのかと思いましたが、創元推理文庫は、日本の作家の背表紙は黄色で統一されているようなので、やはりそのようです。ということは、創元推理文庫で米澤穂信が書いている、「小市民シリーズ」を意味しているということなのでしょうか?

自分の本を暗示しているのなら、あえて解説するのはヤボですから、これはこのままで良いのかもしれませんが、何となくスッキリしません…。



※ブログ内の関連記事(米澤穂信)

米澤穂信 / 著作リスト

(ブックレビュー / 古典部シリーズ)
氷菓
愚者のエンドロール

毒入りチョコレート事件

※関連サイト

汎夢殿・米澤穂信公式サイト
TVアニメ「氷菓」オフィシャルサイト
TVアニメ「氷菓」京アニサイト 京都アニメーション


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