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zoom RSS 毒入りチョコレート事件 (アントニー・バークリー)

<<   作成日時 : 2012/05/28 21:20   >>

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満足度3 ★★★

創元推理文庫
原題 THE POISONED CHOCOLATES CASE
翻訳 高橋泰邦
初出版 1929年
読んだ回数 1回






創元推理文庫−裏表紙の紹介文

ロジャー・シェリンガムが創設した「犯罪研究会」の面々は、迷宮入り寸前の難事件に挑むことになった。被害者は、毒が仕込まれた、新製品という触れ込みのチョコレートを試食した夫妻。夫は一命を取り留めたが、夫人は死亡する。だが、チョコレートは夫妻ではなく他人へ送られたものだった。事件の真相やいかに? 会員たちは独自に調査を重ね、各自の推理を披露していく――。


感想、みたいなもの

米澤穂信「愚者のエンドロール」のあとがきに、

本作はバークリー『毒入りチョコレート事件』への愛情と敬意をもって書かれました。

とあったので、読んでみることにしました。

作品名は何となく記憶にあったのですが、もちろん未読。書かれたのが1929年と、アガサ・クリスティー等、古典本格派の時代ですが、その中で、異彩を放つ作品ということのようです。

内容的には、「多重解決」と呼ばれるジャンル?の最初のもので、ミステリー愛好会とでもいうべき「犯罪研究会」の活動として、メンバーそれぞれが、迷宮入りした事件の謎解きに挑戦するというストーリーです。

メンバーは、会長で小説家のロジャー・シェリンガムを始めとする6名。それぞれが、一人ずつ順番に自分の推理を披露して、それが正解かどうかを他の会員が検討していくという趣向です。



元々は、作者のバークリーが、本格推理の典型的なパターンである、「探偵のみが、唯一人、正解の推理に辿りつく」「探偵は決して間違えない」ことに疑問を持ち、アンチテーゼとして「多重解決」というパターンを示したということのようです。

−−−−−

事件自体はいたってシンプルで、逆に言えば、シンプルであるからこそ、多くの推論、すなわち「多重解決」が成り立つということで、各自のたどりついた「正解」は、それなりに説得力のあるもので、「なるほど、そういう見方もあるのか」と、まずまず楽しめました。

毎晩、一人ずつ「正解」を発表するのですが、完璧に見えた推理が、ある偶然によって最後に否定されたり、若干の疑問がある場合は判断が保留されるなどして、結局、6人全員が発表することになります。

一応、最後に発表した会員の推理が「正解」のようですが、それでも作者は、それが本当に立証できるか何となく含みを持たせて、結論を保留した感じで本作は終わります。

確かに多くの、と言うか、ほとんど全ての探偵ものは、主人公が謎解きを披露して大円団となるわけですが、理屈がキチンと通っていれば、(現実には、ちょっとした偶然で、全てが覆されることもあるのを承知の上で)読者はそれを受け容れるしかありません。

「いくつもの見方があっていいはずだ」、という主張を否定はしませんし、逆に、現実の世界では冤罪を生まないように、そういった姿勢が望まれると思いますが、小説という虚構の世界で、「主人公だけが真相を解明するというのはおかしい」と言っても仕方ない気がします。



まさしく、「それを言っちゃあ、おしまいよ。」の世界だと思います。

「お好きなものをどうぞ」ではなく、その作品に対し、どの選択を施すかで読後感が決まり、評価が決まるわけですから、やはり作者が自分で選んで決めるべき問題だと思います。

そういう意味では好みの問題だと思いますが、そこそこ楽しめたものの、少なくとも私の好きなタイプの作品ではありませんでした。

−−−−−−−−−−−−−−−

作品中の登場人物をイメージ化したオリジナルイラストを載せている「Mystery.file ミステリー小説ナビ」に、「犯罪研究会」の6人のメンバーの内、2人のイラストがありましたので、ご紹介します。



左が、小説家で才女であるアリシア・ダマーズ。右が、6名中、最も冴えない男として描かれているアンブローズ・チタウィック。

私の脳内イメージは特に湧かなかったのですが、これを見ると、なるほどこんな感じかもしれません。

−−−−−−−−−−−−−−−



表紙は、左が2009年からの新版で、右がそれまでの旧版です。訳自体、新しくなったのかどうかは分かりませんが、訳者は同じ方です。

新版のイラストは牛尾篤氏によるものですが、シックな感じが古典作品とマッチしていると思います。



なお、牛尾氏は、同じ作者の「第二の銃声」「ジャンピング・ジェニイ」の表紙も手掛けています。





洋書は、さすがに古典の名作だけあって、たくさんのものがありました。どれも、雰囲気がある丁寧な作りで、見ているだけで楽しめました。


印象に残った言葉

「ぼくが一つ、本を書きますかな。その中で探偵はそれぞれの事実から六種の両立しない推論を引きだすんです。彼はけっきょく、七十二名の容疑者を逮捕し、後になって彼は自分がやったに違いないと気づいて自殺して終わる話です。」

−−−−−

会員の一人のミステリー作家が、最後に自嘲気味に語った内容です。

本作で六人が提示した「推論」は、その内容の全てが間違いというわけではなく、「ある部分に関しては正解」、というものでした。

一つの証拠に対して正解はひとつではない。となると、いくつもの証拠の組み合わせによって、犯人の可能性は無限に広がるか、逆にいなくなるかのどちらか。

言いだしたら切りがないわけで、作家は次にこう述べます。

「ぼくの未来の探偵たちは、何も推論を引き出さないタイプにしよう。第一、その方が、ぼくにはずっと楽だからね。」



※ブログ内の関連記事

(ブックレビュー)
愚者のエンドロール / 米澤穂信

※関連サイト

牛尾篤の新 箱庭療法


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