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zoom RSS 誘拐ラプソディー (荻原 浩)

<<   作成日時 : 2012/05/14 21:36   >>

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満足度3.5 ★★★☆

双葉文庫
初出版 2001年
読んだ回数 1回








双葉文庫−裏表紙の紹介文

伊達秀吉は、金なし家なし女なし、あるのは借金と前科だけのダメ人間。金持ちのガキ・伝助との出会いを、「人生一発逆転のチャンス?」とばかりに貼りきったものの、誘拐に成功はなし。警察はおろか、ヤクザやチャイニーズマフィアにまで追われる羽目に――。しかも伝助との間に友情まで芽生えてしまう……。はたして、史上最低の誘拐犯・秀吉に明日はあるのか? たっぷり笑えてしみじみ泣ける、最高にキュートな誘拐物語。


感想、みたいなもの

伊達秀吉、38歳。
女房子供なし、住む家も金もない。
あるのは320万の借金と前科だけ。

自殺を決意した秀吉ですが、イザとなると自殺する勇気もなく、公園で途方に暮れていたところ、現れた子供を見て誘拐を思い付きます。

しかし、その子供はヤクザの組長の息子だった…。

というストーリー。

荻原浩の著作を読むのも、これで4冊目。

いつものように、その、ギャグの切れ味は鋭くはないものの、冒頭シーンの、自殺すると言いつつ、全く死ぬ気のない秀吉の言動には、チョット笑えす。

その後の物語の展開は、特に意表を突くでもなく、わりと良くあるパターンで進みますが、それでも、まあまあのテンポで、それなりにサクサクと面白く読み進めることが出来ました。

ラスト近くとなり、さて問題は、どうやってこの話の落とし前をつけるかに絞られ、うまく決まれば、★★★★★は無理でも★★★★はあるかもしれないという感じでしたが、結局のところ、特にヒネリのない平凡なラストだったので★★★☆という感じ。

どんでん返しもなく意外性に乏しいのですが、「やっぱり人生ってこういうものだよね。」という、変にヒネらない平凡な感じは、逆に言うと安心して読むことができて、最後に何となくホッとする、そんな、気分の良い読後感を味わうことができました。

ただ、毎度のことですが、ほろ苦さ…も足りないし、人情味…あふれもしないし、ユーモアも…足りない気がする荻原作品。

かと言って、エゲツないどんでん返しは好きではないので、サジ加減が難しいとは思いますが、そのあたりが改善されると、もっと満足度があがると思います。

−−−−−−−−−−

エンジンを停め、リクライニングを倒し、カーステレオにテープを入れる。最後の曲は決めていた。矢沢永吉の『いつの日か』だ。

冒頭、自殺を決意した秀吉が、この世の最後にと、かけた曲。

永ちゃんは嫌いではありませんが、そんなに曲を知っているわけではなく、この曲を知らなかったので、調べてみました。これから読む人は、読み始めのBGMにどうぞ。



−−−−−−−−−−−−−−−



現在書店にある文庫の表紙(左)は、映画化に合わせて変更されたと思われ、最初は、右の表紙だったようです。

あまりの違いに驚きますが、内容がコメディータッチのソフト路線なので、現在の表紙の方が雰囲気は合っていると思います。

というより、最初の表紙は、何故こんなハードボイルドなものにしたのか理解に苦しみます。少なくとも、表紙買いは誘えないと思いますし、ハードボイルドと思って買った人は、あまりのギャップに怒りを覚えるのではないでしょうか?



そして、単行本の表紙がコレ。

夕暮れの風景ですが、あまりパッとしない出来だと思います。

いつも表紙の感想を書いているように、私は表紙にコダワル人間ですが、こうして3つの表紙を見ても、結構、表紙って大事だということがわかるのではないでしょうか?

−−−−−−−−−−−−−−−



「誘拐ラプソディー」は、映画化され2010年に公開されています。


キャストは、主人公の伊達秀吉が、高橋克典。



ヤクザの組長・篠宮智彦は、ベタですが、哀川翔。



刑事の黒崎保には、これまたベタですが、船越英一郎。

ユーモアミステリーなので、こんな感じで良いと思いますが、



組長夫人の篠宮多香子役がYOUというのは、読んだ感じではそういうイメージは私にはなかったのですが、どうなんでしょうか?




この作品は、映画化に向いているような気がするので、観てみようと思いますが、



ネットに、主役の高橋克典のインタビュー記事がありました。

これによれば、高橋克典は、ちょうど映画作製の直前に、自分の子供が生まれたとのことで、

子どもが生まれてから、想像もしていなかった感情がわき出てきて、心の底から子どもがかわいいと思えるようになりました。自分の子はもちろん、他人の子もかわいくて、以前とは子どもに対する心の開き方がまるで違う。だから、伝助を大切に思うようになる秀吉の気持ちと、自分の気持ちがうまくリンクできました。

と語っています。

上手い具合に感情移入できたのでしょうけれど、実際の主人公は結婚もしていない、子供もいない男で、子供を誘拐したものの、その扱いに困ってしまうという場面もあるので、そういう意味では、両方の気持ちを理解するには、グッド・タイミングだったのでしょう。

こう考えると、本作品自体、子供のいる人と、そうでない人によって、読んだ感じ方が異なる部分があるのかもしれません。

−−−−−



なお、映画の主題曲、「元少年の歌」(フラワーカンパニー)のPVは「誘拐ラプソディー」の1年後の世界を描いており、映画のキャストや、作者の荻原浩も出演している、楽しい内容になっています。




※元少年の歌 フラワーカンパニーズ (フル・バージョン


※元少年の歌 フラワーカンパニーズ (歌部分から再生


♪子供の時見えて 今見えなくなったもの
 もう一度見てみたくて 遠い空を見上げてる

 大人だって泣くぜ 大人だって怖いぜ
 大人だって寂しいぜ 大人だってはしゃぐぜ
 大人だって愚痴るぜ 大人だって逃げるぜ
 大人だって遊ぶぜ 大人だって…子供だったんだぜ


※歌詞はこちら



印象に残った言葉

「なぁ、桜田。」
「はぁ。」
「子どもってのは、面倒なもんだな。」

桜田には何も答えようがない。

「ヤクザの子どもってな、不幸か?」
篠宮が訊いてくる。これなら桜田にも答えることができる。

「親は選べませんから。幸も不幸もありません。他にいないんだから仕方ない。」


−−−−−

組長の篠宮が、ナンバー2の桜田に問いかける場面です。

ヤクザだろうがカタギだろうが、子を思う親の気持ちは変わらない。

そういうことなのだとは思いますが、どんな形でも、ヤクザを美化したり庇ったりする表現が嫌いな私としては、「子供がいるのなら、ヤクザになんかなるな。ヤクザになったなら、子供なんか作るな」と突き放したいところですけどね。まあ、気持ちは分かります。



※ブログ内の関連記事(荻原浩)

荻原浩 / 著作リスト

(ブックレビュー)
オロロ畑でつかまえて
ハードボイルド・エッグ

誘拐ラプソディー
母恋旅烏


※関連サイト

『誘拐ラプソディー』高橋克典 単独インタビュー
誘拐ラプソディー -イントロダクション- 角川映画


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
ほろ苦さも足りないし人情味もないしユーモアも足りない

しかも特にヒネリのない平凡なラスト・・・。
なんか、文庫本に手を出すのを止めてしまおうかと思うくらい(笑)。

でも、仕方ないそうです・・・。
荻原さんの解説記事を見つけたんですが、どうやら
「変わることのないひとつの手法で表現し続ける」のが
才能、なんだとか。
http://www.birthday-energy.co.jp/


佑吉
2012/05/14 23:02
★>佑吉さん
コメントありがとうございました。

確かに、あまり誉めていない文章ですが、基本的に★★★☆の意味は、「惜しい!」という、期待を込めた満足度なので、「どこが物足りなかったか」について記述してしまうことが多いのです。

ただ、基本的に★★★以上は「面白かった」ということなので、興味があるのなら、是非、読んでみて下さい。

リンクのサイトを見てみました。
才能…ですか。

荻原浩を最初から読んでいますが、まだ四作目なので、現在では、同じ手法(ユーモア)での表現も、もっと巧みになっているかもしれません。最初から読むのは、そういう作家の変化を楽しむためにやっていることなのです。
北旅@管理人
2012/05/15 22:37

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