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zoom RSS アナザーフェイス (堂場瞬一)

<<   作成日時 : 2012/05/19 14:54   >>

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満足度4 ★★★★

文春文庫
初出版 2010年
読んだ回数 1回









文春文庫−裏表紙の紹介文

警視庁刑事部総務課に勤める大友鉄は、息子と二人暮らし。捜査一課に在籍していたが、育児との両立のため異動を志願して二年が経った。そこに銀行員の息子が誘拐される事件が発生。元の上司の福原は彼のある能力を生かすべく、特捜本部に彼を投入するが……。堂場警察小説史上、最も刑事らしくない刑事が登場する書き下ろし小説。


感想、みたいなもの

堂場瞬一による警察小説のシリーズは、現時点で下記7シリーズあります。※シリーズ名 (第一作) 第一作の出版日

刑事・鳴沢了 (雪虫)                2001/01/12
真崎薫(蒼の悔恨)                2007/07/06
汐灘サーガ (長き雨の烙印)          2007/07/11
警視庁失踪課・高城賢吾 (蝕罪)       2009/09/02
警視庁追跡捜査係 (交錯)          2010/01/18
刑事総務課・大友鉄 (アナザーフェイス)  2010/07/09
澤村慶司シリーズ (逸脱)              2010/09/01

堂場瞬一の大ファンの私ですが、「堂場瞬一歴」は浅く、まだ「鳴沢シリーズ」すら、全部読み切ってはいません。

「書かれた順に全部読む」ことを基本にしているので、最後発の「刑事総務課・大友鉄シリーズ」を読むのは、いつのことやらと思いつつ、積読していたのですが、他の未読シリーズを飛び越え、今回、読んでみたのには理由があります。

それは、「警視庁失踪課・高城賢吾シリーズ」を読み始めたのと同じ理由なのですが、



「アナザーフェイス」がTVドラマ化され、2012年5月26日に放映されることになったからです。

ドラマを見る見ないは別にして、映像化されると、文庫には映像化の帯が巻かれ、特設コーナーで大々的にプッシュされたりと、映像化情報をイヤでも見聞きしてしまい、避けて通れなくなります。

何度も書いているように、本を読むという「知的行為」の本質は、自らの創造力に任せ、小説世界を頭の中で構築し楽しむことだと思っているので、無遠慮にイメージ世界を押しつけてくる「情報の暴力」に、その楽しみを奪われないうちに読み始めておこうと思ったのです。

−−−−−

主人公・大友鉄は、「2年前まで捜査一課の刑事だったが、妻を交通事故で亡くし、小学校2年の息子・優斗の育児との両立のために、刑事総務課への異動を希望した」という設定です。

捜査の最前線ではなく後方支援的な部署に異動した育メン刑事という設定は、警察小説としては異色だと思いますが、これについて作者の堂場瞬一は、雑誌のインタビューで次のように説明しています。

『今までは二十四時間、刑事という人間ばかりを描いてきたんですが、決して、刑事がそういう人たちばかりではないわけで、もうちょっと生活感があって、一般社会人としての良識がある人を書いてみたかったんです。やっぱり、百パーセント刑事という奴ばかり書いていると疲れるんで(笑)。』

『一人で動くけど一匹狼や不良警官ではない、今までにない、刑事らしくない刑事を描いてみたかった。』


また、こんなことも言っています。

『警察という男性社会のなかでは、まだまだ、男性の子育てについての理解がない。シングルマザーはマスコミで話題になることが結構ありますが、シングルファーザーが話題になるのは、非常に珍しい。

でも、実際にはたくさんいらっしゃるわけですよ。そういう点も含めて、いままでとは毛色の違う作品なだけに、どういう読まれ方をするのか、批判も含めこれからが楽しみです。』


乃南アサの「音道貴子シリーズ」では、男社会に生きる女性の姿が描かれていますが、「逆の視点もあるよ、女性だけが苦労しているんじゃないよ。」という堂場瞬一のメッセージかもしれません。

また、本作には沢登有香という、押しの強い女性新聞記者が登場しますが、彼女を「男社会で奮闘する女性」という対極の存在として置いているような設定に思えます。

どうやらレギュラーになるような雰囲気ですが、彼女と大友に恋愛感情が生まれるような、ありがちなストーリーは避けてもらいたい気がしますが、

身長百六十センチぐらいだろうか、意志の強そうなまなざしに、不信感が一杯に宿っている。軽く噛み締めた唇に悔しさが滲んでいた。

笑えば可愛いはずなんだけどな。だけど、怒った顔にも凛とした魅力がある――いかん、何を考えているんだ。大友は頭を振って、暴走する考えを押し潰した。


というように、「アンタは鳴沢了か!」と、ツッコミを入れたくなるように、大友にも、堂場作品に共通した「女好き」の血が流れているようなので、無理だと思いますが…。

−−−−−

ということで、内容を知らずに読み始めたのですが、直前に読んだのが「誘拐ラプソディー」ということで、偶然、誘拐ものが続いたことになります。

「誘拐ラプソディー」がコメディータッチの作品ということで、真面目モード?の本作は、誘拐の手口も、捜査側の対応も、まるで違って面白かったです。

大友は刑事総務課所属なので、基本的には、事件を直接捜査はしません。しかし、大友の能力を評価している、捜査一課時代の上司・福原が、今回の事件の特捜本部に大友を指名したという設定です。

その、大友の「能力」とは、学生時代に芝居をやっていたため、状況に応じて、冷静にその場に適した雰囲気を演じることができる、すなわち、「アナザーフェイス」を持った刑事ということのようです。

文中でも、大友を評して、

「大友さんって、人に警戒心を与えないタイプなんですね。それも一種の才能かもしれませんよ。」

「お前を見ると人は安心する。信頼する。」

被害者の心に壁を作らない。容疑者を警戒させない


といったものがあるように、ソフトイメージがウリのようです。

とは言え、今回の話で、その能力が存分に発揮されているかと言うと、もうひとつ描き足りないように見えますが、それは次作以降、生かされるものと期待しておきます。

事件自体は、わりとアッサリと解決へ向かいますが、読後感は悪くないし、確かに、他の警察ものとは、少し違う感じもあり、楽しめました。

鳴沢了や高城賢吾とも、また違った刑事像を描く堂場瞬一。

刑事もの以外に、スポーツものも手掛けていることを考えると、実は堂場瞬一こそが「アナザーフェイス」の持ち主なのではないか、そんな気がします。

−−−−−−−−−−

ドラマですが、大友鉄には、仲村トオルがキャスティングされ、



先日、ドラマの番宣で、息子・優斗役の鈴木福くんと一緒に、プロ野球の始球式を行ったそうです。

作品内での大友の描写には、何度も何度もしつこく「イケメン」という言葉が使われていました。腕力は期待できない、とにかく優男というイメージ。



「イケメン」という点では仲村トオルも悪くはないと思いますが、目つきもわりと鋭いし、優男というのは、ちょっと違う感じ。



そこで思いついたのは、「誘拐ラプソディー」を読んだばかりということもあり、伊達秀吉を演じた高橋克典。

こちらの方がピッタリな気がしました。



今回読んで、他の登場人物でイメージした人では、今回、大友と捜査を共にする捜査一課の刑事、柴克志がいます。

彼は大友の同期ですが、かなり短気で得意技が暴走という「悪い人じゃないけれど、すぐに頭に血が上るタイプ」という刑事。



私がイメージしたのは、柴俊夫(古くてスミマセン)。

畝原シリーズに登場する横山の時と同じパターンの発想で、あまりにも短絡的ですが、作家にしても、登場人物に現存の人物をイメージした場合、あるいはイメージさせたい場合、その名前を拝借するということはありそうなことです。

ギョロ目で、短気そうで、刑事っぽい顔つきの柴俊夫。



もちろん年齢的に、現時点でのドラマ出演は無理ですが、若い頃のイメージなら悪くないと思います。



ちなみにドラマの柴克志は、私の嫌いな、「お笑い系なんちゃって俳優」の、キム兄こと木村祐一だそうです。

アホくさっ。



−−−−−−−−−−−−−−−



このシリーズは文庫書き下ろしなので、単行本はなく、これが全てです。ガソリンスタンドのようですが、作品中にこんなシーンがあったかどうか…。

シリーズはすでに3冊刊行されていますが、下3分の1が白抜きという、構図としては同じパターンが踏襲されています。パッと見てわかると思いますが、明らかに帯を意識した構図です。

帯が巻かれる位置を考慮した表紙というのは、もはや文庫では当たり前だと思いますが、このように、その部分をデザイン領域から外す構図は、帯を外した時にマヌケに見えるので、好きではありません。


印象に残った言葉

大友は素人俳優に過ぎなかったが、役作りのための感情移入の方法は学んでいる。人物になり切ること――すべてはそこに要約されるが、大友はそれが人一倍上手い、と評されていた。

役者は主に二種類に分けられる。どんな役でも自分の個性に当てはめてしまう「個性型」と、自分を殺して役になりきる「憑依型」だ。そして大友が役になりきるための最大にして唯一の手法が入念で素早い観察だった。


−−−−−

東直己の「俺シリーズ」の映画化についての感想で、「私にとって理想は、透明のコップのような俳優です。」と書きましたが、私の理想は、まさにこの「憑依型」です。

「個性型」と言えば、聞こえは良いですが、別に、役を演じているわけじゃないですからね。本当の意味で役者ではないと思います。

まあ、そういう俳優の方が多いのも事実ですが、少なくとも「役者」ではないですね。「役になり切る者」じゃないですから。

そして、小説の登場人物の場合、その小説内でのキャラが既に確立されているわけですから、「個性」がピッタリでない限り、基本的には「憑依型」でなければダメ。私はそう思います。



※ブログ内の関連記事(堂場瞬一)

堂場瞬一 / 著作リスト

(ブックレビュー / アナザーフェイスシリーズ)
アナザーフェイス

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※関連サイト

堂場瞬一10周年記念特設サイト
堂場瞬一 with 中央公論新社

堂場瞬一『敗者の嘘 アナザーフェイス2』|文藝春秋|特設サイト
『アナザーフェイス』 (堂場瞬一 著) 著者インタビュー - 本の話WEB
テレビ朝日|土曜ワイド劇場


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
やっぱり鳴沢は捨てられなかった・・・。

アナザーフェイスの頃はまだ堂場さんにハマって無くて、
ずいぶん残念・・・。

新作「ラスト・コード」を読みましたが、若手刑事と少女の
組み合わせは、意表をつかれました。
もう一つの意表は、過去に登場した人物たちが出てくる事。
鳴沢も出てくるし・・・。
面白く読み終わりました。
そして「ラスト・コード」が本当に新たな試みの
第1歩だとする解説まで見つかったり。
http://www.birthday-energy.co.jp

新たな方向を打ち出すタイミングもバッチリ、とのこと。
これは期待ですね。
森樹
2012/08/18 16:35
★>森樹さん
返信が遅くなり申し訳ありませんでした。

アナザーフェイスのTVドラマは観ましたが、もうひとつという感じでした。

イメージ的にはまあまあだと思いますが、やはり、自分の頭の中でイメージされるものとは異なる事が多いですね。

鳴沢シリーズは、やはり、堂場瞬一の原点なのでしょう。アナザーフェイスもそうですが、主人公は、どこか鳴沢のイメージを引きずっているような気がします。
北旅@管理人
2012/12/31 17:05

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