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zoom RSS 警官の条件 (佐々木 譲)

<<   作成日時 : 2014/02/08 13:02   >>

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満足度4.5 ★★★★☆

新潮文庫
初出版 2011年
読んだ回数 1回








新潮文庫−裏表紙の紹介文

警部に昇任し、組織犯罪対策部第一課の係長に抜擢された、安城和也。彼は自らのチームを指揮し、覚醒剤の新たな流通ルートを解明しようと奮闘していたが、過程で重大な失策を犯してしまう。重苦しいムードに包まれる警視庁に、あの男が帰ってきた。かつて、“悪徳警官”として石もて追われたはずの、加賀谷仁が! 警察小説の頂点に燦然と輝く『警官の血』―白熱と慟哭の、第二章。


感想、みたいなもの

※本作は「警官の血」のネタバレ前提の作品なので、「警官の血」を未読の方は、そちらを先にお読み下さい。というより、そもそも「警官の血」を読まないと本作は良く分からないと思います。

※ネタバレはしていませんが、もしかすると先入観を抱かせるような書き方になっているかもしれません。本作を読了してから私の感想をお読みいただく方が良いと思います。内容については、文句なく楽しめると思います。



人物相関図(新潮社の特設サイトより) ※画像クリックで拡大します。

「安城清二」とその息子「安城民雄」、孫の「安城和也」の三代に渡る警察官の姿を描いた、「警官の血」の続編。

続編と言っても、「清二」「民雄」の出番はなく、三代目の「和也」の警察官としてのその後を描いた続編で、前作で、和也の上司だった加賀谷警部が復職し、この二人を中心に物語が展開されます。

「警官の血」を読んでからかなり経っているので、読み直しが必要かと思ったのですが、冒頭の部分は、「警官の血」の終盤の重要な場面が再現され、自然と記憶をよみがえらせてくれました。

ページ数は多いものの、一気に読ませるスピード感と緊張感が持続され、あと20ページくらいになっても、どういうラストになるのか分かりませんでした。

そしてそれが、想像を超えた「ああそうだったのか」であれば良かったのですが、この結末から、「警官の血」と合わせて作者が何を言いたいのか分からなくなり、正直なところ、うろたえました。

前作と、「善悪の対象」が変化したと言えなくもないのですが、何だか八方美人的な感じで、私にはしっくりきませんでした。

「警官の血」で示された「警官としてのあるべき姿」と、「警官の条件」で示されたそれとは違っているのでしょうか? 警官の血」を読んだ時の感動は、あれで良かったのかと、あの時の感動まで薄められてしまった気がしました。

−−−−−

落ち着いてから読み返してみると、その原因は、加賀谷が復帰した意図がわかりにくいことにある気がしました。

かつて加賀谷がいかに大きな影響力を持っていたとしても、復帰してからわずかの期間で物語が急に動き過ぎる気がします。それでいて、あまり必要のないようなエピソードもチラホラ。

果たして「警官の血」を書いた時、すでに佐々木譲に続編の構想があったのか疑問に思いました。何となく、後付けでストーリーを修復したようにも見え、もう少し時間をかけて伏線を張るなど、加賀谷と和也の心の動きを丁寧に描いて欲しかったと思います。

もちろん、さらなる感動を得られた方も多いだろうと思いますが、私としては何かを失った感があるのは確かで、「ああ、こういうのを蛇足というのか。」と思いました。

この作品は「警官の血」を読んでこそだとは思いますし、「警官の血」を読んで感動した人は、あの続編とあらば読まずにはいられないだろうと思います。そしてその期待を裏切らない「読み応え」だとは思いますが、私にとっては「とてつもなく面白い蛇足」だったと言っておきます。

自分の解釈、好みとシンクロすることができれば、ラストシーンは、文字通り心に響いたかもしれませんが、私には虚しい響きでした。

ということで、読んだ感想としては、文句なしに楽しめたので★★★★★なのですが、ラストのワンピースがきちんとハマらなかったので、★★★★☆としました。

−−−−−−−−−−

「警官の血」の感想で、

「佐々木譲の書く文章は、会話の部分で、誰が言った言葉か分からなくなることが頻繁にある。」

と書きました。

本作品でも、最初のうちは大丈夫だったのですが、会話が多くなるにつれて、またまた分からなくなる場面が増えていき、「あ〜あ、またか。」という思いでした。

「警官の条件」は、2011年に刊行されたので、かなり最近の作品です。それでも一向に改善されないのですから、これについては、佐々木譲を読む限りにおいて、もうどうしようもないのでしょう。

他の作家では、ほとんど気になったことがないのですが、流れを止められてしまうこのクセは、作品が面白いだけに残念です。

−−−−−

また、今回新たに気になったのが、「行く」を「ゆく」と表記していることでした。

以前は、「行く」を「ゆく」と表記、発音するのは、「言う」を「ゆう」と表記するのと同様、誤りだと思っていましたが、調べてみると、そもそも「ゆく」の方が古くから使われていて、正しい表記・発音とのことで、驚いたことがあります。

出版の世界のガイドラインがどうなっているかは知りませんが、少なくとも、いろいろな文庫を読む限りにおいては、「ゆく」と表記されるケースは少ないと思います。

「行く」と漢字で書くのが一般的であり、それを読み手が自由に、「いく」「ゆく」と読めば良いと思うのですが、本作においては、ほぼ全て、「ゆく」の表記となっていました。

生活の場に置いて、「ゆく」と発音するひとも多いと思いますが、書き言葉は「行く」の方が多いと思います。わざわざ「ゆく」と書くのですから、その人が「ゆく」と発音する人であると強調したい、書き分けの意図があるのではないかと思っても、本作では、どの登場人物も「ゆく」になっているのです。

「警官の血」を読んだ時は感じなかったので、ざっと調べてみたところ、「警官の血」では、「行く」と「ゆく」が混在していました。

混在と言っても、人物による使い分けではなく、同一人物でも混在していて、意図が分からず違和感がありました。ついでに、同じ新潮文庫の「制服捜査」も調べてみたところ、やはり、「行く」と「ゆく」が混在していました。

「ゆく」も「いく」も正しい表記・発音ですから、どちらを使おうと勝手だとは思いますが、「行く」と漢字で書いておけば良いものを、敢えて「ゆく」と書く意図は何なのでしょうか?

佐々木譲の文章は、やっぱり読みにくいです。

−−−−−−−−−−

本作は782頁という、一冊の文庫としてはかなりの分量で、実際、これまでブログに書いた本の中では最も多いページ数でした。

「死体農場」の記事で書いたように、最近は、たいしたページ数ではないにもかかわらず、上下分冊にするケースが増えています。

本作は、最近の傾向を考慮するまでもなく、ページ数からみても上下巻で出版されるのが普通だと思いますが、何故か分割されませんでした。

文庫を手にした時は、782頁もある厚さには見えなかったので、ページ数をみてビックリしたのですが、どうも紙質が、普通より薄手のものを使っているようでした。

しかしそんなページ数なのに、価格は、ナント、940円(税別)!!

350頁前後しかないコーンウェルの「死層」が、上下それぞれ1271円のボッタクリに怒りまくったことを思うと、これは良心的と言えるのではないでしょうか?

もちろん、紙質の薄い方が安く作れるとは必ずしも言えないと思いますし、新潮文庫的には1冊にまとめた方が採算がとれるのかもしれませんが…。

ただ、782頁ということで重さはそれなりにあって、持ち運ぶにはチョットという感じがあったことも確かです。

新潮文庫は、未だに文庫にしおり紐をつけてくれていることから好きな文庫ですが、文春文庫のボッタクリを見た後なので、さらに好感度がアップしました。

新潮文庫、偉い!(のかも?)

−−−−−−−−−−

 

文庫の表紙は、画像が単行本(右)の車から拳銃に変わりましたが、重めのイメージは同じです。

「警官の血」では全く同じ画像を使い、題名のレイアウトだけを変えていましたが、今回は、レイアウトのパターンは踏襲しているものの、画像は変えています。

「警官の血」の感想で、

手抜きと言えば手抜きですが、無理に変えて、改悪となるくらいなら、これで良いと思います。

と書きましたが、改悪とは思いませんが、代わり映えしないので、同じで良かったのではと思います。


印象に残った言葉

「おれはうちを担当したのが加賀谷だったことを、喜んでいる。あんな刑事だから、つきあってやる価値もあったというものだ。」

「つまり結論は? 組対一課には協力できないと?」

「ちがう。組対一課なんかどうでもいい。問題はあんたですよ。おれがあんたを信用すべき理由はないってことだ。どうしてもって言うなら、信用させなよ。おれを信じろと、ひとこと言ってみろ。信じろと言うときは、生命を賭けるということだ。できるか?」


−−−−−

和也が、かつて加賀谷に協力していた「組」を訪ねた時のやり取りです。

暴力団と敵対するのではなく、ある意味、「持ちつ持たれつ」の関係を築くのが加賀谷のやり方ですが、逆に、こういう「なれ合い」を断固拒否するのが、「新宿鮫シリーズ」の鮫島警部です。

実際には、小説以上の癒着が行われているのではないかという気がしますが、だからこそ、鮫島を応援したくなるわけで、どうころんでも、私が加賀谷のやり方をは好きになることはありません。

前作からずっと、加賀谷と、加賀谷的やり方の反対側に位置する和也という図式で見ていたので、そういう意味で、今さら今回のようなラストを提示されても、受け入れられなかったのだと思います。



※ブログ内の関連記事(佐々木譲)

佐々木譲 / 著作リスト

(ブックレビュー / 警官の血シリーズ)
警官の血
警官の条件

※関連サイト

佐々木譲資料館 / 佐々木譲公式サイト
佐々木譲『警官の血』『警官の条件』|新潮社


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