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zoom RSS ルーキー 刑事の挑戦・一之瀬拓真 (堂場瞬一)

<<   作成日時 : 2014/05/15 10:42   >>

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満足度4 ★★★★

中公文庫
初出版 2014年
読んだ回数 1回








中公文庫−裏表紙の紹介文

一之瀬拓真、二十五歳、交番勤務から千代田署刑事課強行犯係に転属した新人刑事。管轄はビジネス街 - このエリアは窃盗犯中心だと聞いたが、初日から殺人事件が起きる! 被害者に恨みをもつ人物はなかったが、不審な入金が発覚し、捜査陣は色めきたつ。一之瀬は教育係の藤島の薫陶の下、第一歩を踏み出す。新シリーズ、始動! 文庫書き下ろし。


感想、みたいなもの

シリーズものの警察小説を数多く書いている堂場瞬一。

過去のシリーズとして以下の7つがあります。

・2001/01〜   刑事・鳴沢了
・2007/07〜   真崎薫
・2007/07〜   汐灘サーガ
・2009/09〜   警視庁失踪課・高城賢吾
・2010/01〜   警視庁追跡捜査係
・2010/07〜   刑事総務課・大友鉄 (アナザーフェイス)
・2010/09〜   澤村慶司


多くの出版社から本を出している堂場瞬一ですが、中公文庫は、「堂場瞬一 with 中央公論新社」という特設サイトを作っていることからもわかるように、堂場瞬一に最も力を入れている出版社と言えると思います。

その中公文庫でのシリーズとしては、上記のうち「刑事・鳴沢了」と「警視庁失踪課・高城賢吾」の2つがありますが、共に10作品以上の長期にわたるシリーズでした。

昨年、「高城賢吾シリーズ」が完結したので、当然、次のシリーズが始まることが予想されたのですが、いよいよ新シリーズ「刑事の挑戦・一之瀬拓真」がスタートしました。

上記のサイトに掲載された作者本人のコメントによると、

今回の主人公は、25歳の新人刑事、一之瀬拓真。荒っぽい事件の少ない都心部の署で刑事になり、様々な経験を積んでいきます。シリーズ物では今までにない若い主人公ですが、今後読者の皆さんと、彼の成長を見守っていきたいと思います。どうぞお楽しみ下さい。

とのことで、「成長物語」というところが特色であると言えます。

以前、堂場瞬一の講演を聴きに行ったことがあります。

その時のテーマは「スポーツ小説」だったのですが、堂場さんは、「自分の書く対象は、トップを極めた者のギリギリの世界における葛藤のようなものであり、いわゆる成長物語は書かない。」というようなことをおっしゃっていたのを思い出しました。

確かに、舞台が「メジャー・リーグ」であったり、「甲子園」であったり、「箱根駅伝」であったりと、段階は違えど、「トップステージ」での物語になっており、「草野球から負けを繰り返しつつ成長し、遂にはトップの座に上り詰める」といった小説は見当たりません。

同じように、警察小説においても、ちょっと脱線した刑事だったりはしますが、多くは「プロの刑事」を主人公にした物語でした。

最も、鳴沢了の場合は新潟での新米時代も描かれていますが、彼の場合は、自分を生まれながらの刑事だと思っていて、新米だなんてこれっぽっちも思っていなかったりするので、いわゆる「成長物語」とは少し違うと思います。

−−−−−

ということで、読み始めた新シリーズ。堂場作品には珍しくはありませんが、「文庫書き下ろし」です。

私は文庫になってから読むので、また、その作家の作品を発表順に読むことを基本としていることもあり、出版されたばかりのピカピカの作品を読むことは多くはありません。

最近は、イメージの違うキャスティングを押し付けられるのがイヤで、映像化される前に読み始めることも多くなりましたが、今回はそういうことでもなく、せっかくの「文庫書き下ろし」なので、シリーズの進行に歩調を合わせて読んでみようと思ったのです。

主人公の一之瀬拓真は25歳。内幸町の交番勤務の後、千代田署の刑事となりました。


一之瀬拓真シリーズ 「千代田署」管内マップ(中央公論社の特設サイトより

「千代田署」というのは本当にありそうな名前ですが、調べてみると、実際には「丸の内署」のようです。



丸の内警察署のHPに、似たようなマップがありました。こちらには、拓真の勤務していた内幸町交番も記されています。

この地図からもわかるように、千代田署はビジネス街が管轄のため、管内人口はほぼゼロという、「市民の生活を守る」という意味では、他の警察署とは違う特殊な署です。

次に拓真の人物設定ですが、鳴沢了のように、祖父も父も警官という、なるべくしてなった刑事とは違い、拓真の警官を志望した動機もハッキリとはしません。

文中で語られるのも、「安定志向。よほどヘマをしなければクビにならない。」といったものですが、それなら市役所とかの普通の公務員になればいいのにと思ってしまいます。

そもそも刑事になったのも、強く望んで志願したわけでもなく、消去法で残った部署だったということで、特別、使命感に燃えているわけでもない「ゆとり世代」の若者が、どう成長していくかという、ある意味、分かりやすい設定と言えるでしょう。

そんな拓真の趣味は、学生時代にバンドをやっていた時から続けている、ギター。





愛用のギターは、学生時代にバイトして購入したという、「フェンダー・ストラトキャスター」で、色は「キャンディアップルレッド」。

このギターがどういった代物なのかわからないので調べてみると、現在ではロックギターの代名詞的なモデルということで、ジミ・ヘンドリックスが使用したことで一気に有名になったとか。



ということで、好きなアーティストは当然のことながら、「ジミヘン」こと、「ジミ・ヘンドリックス」。

ロックギターを弾く刑事、でも「ゆとり」。要するに刑事っぽくないというキャラ設定だと思います。

−−−−−

そんな拓真の教育係としてペアを組むのが、48歳のベテラン刑事、藤島一成、通称「イッセイさん」。

一般の会社でも、この手の組み合わせはあると思いますが、いまどきの若者はマニュアルがないと何もできないというのが、藤島の若者観のようです。

「お前さん、この仕事にマニュアルがないのが不満かもしれないが、そもそもマニュアルが作れない仕事だってあるんだ。」

「別にマニュアルが欲しいわけじゃないんですけど。」つい、本心に反する台詞を吐いてしまう。

「マニュアルが通用しない仕事だということはすぐに分かるよ。だからこの仕事は飽きがこないわけだしな。」


対して拓真も、藤島の年代に対して思い込みを持っていました。

気づくと、藤島が携帯電話を取り出していた。キーを叩く手の動きが異常に速い。

「イッセイさん、携帯打つの、速いですね。」

「ああ? 馬鹿にするなよ。」

「してませんけど……。」

「オッサンは、携帯やパソコンが苦手だと思ってるかもしれないが、そんなこともないんだぞ。」

「思ってませんよ。」実際には、そういう印象を持っている。


昔は、上司・先輩が、自分の年代のやり方を若者に押し付け、その結果、世代間の軋轢を生むというのが一般的でしたが、今は、パワハラと言われたり、若者がすぐに辞めてしまうこともあり、けっこう上の年代が気を遣うケースも増えてきたと思われます。

そういった「押しつけ型の上司に反発しながら、徐々に理解しあう」というのもありがちな設定ですが、一作目を読む限り、藤島はそういうタイプではないようで、まだお互いに探り合っているという感じでした。

さて、堂場瞬一作品に登場する刑事といえば、鳴沢了に代表されるように、硬派、健康オタク、料理にうるさく、靴磨きが趣味といった具合ですが、この堂場キャラ的なのは、拓真の方です。

「野菜は食べたほうがいいと思いますよ。健康のために。」

と、野菜を残す藤島に忠告したり、

「クソ甘いお菓子を食べた時なんかは、罪悪感に襲われますね。」

健康オタクなのかと聞かれても、敢えて否定しません。

また、捜査中に出会う人の見定めとして、

「足下はグッチのホースビットローファー。」
「足下は、微妙に色むらがある茶色のダブルモンクだった。」


というように、履いている靴が気になるようです。

そして、何と言っても堂場キャラに欠かせないもの、そう、「女好き」の一面ですが、第一作では、拓真、藤島ともに、そのような気配はありませんでした。藤島は24歳の時に結婚していて、拓真は現在付き合っている彼女がいます。

今後、二人のどちらかが事件の関係者にちょっかいを出す展開が予想されるのですが、意外に藤島のほうだったりして…。

と、新シリーズの設定はこんな感じですが、今回は、拓真の刑事デビューとなった殺人事件の解決までが描かれています。

設定が2011年4月、東日本大震災直後ということで、当時の様子を絡めて物語は進行します。このように少し時間軸を戻してあるということ、場所が、皇居や官庁の街ということなどから、次作以降も、時事ネタがらみの展開になるのかもしれません。

堂場瞬一の作品は、わりと重めの雰囲気が多いと思いますが、このシリーズは、わりと軽い感じで読みやすいと思います。

内容的には、★★★程度だったのですが、初めて、シリーズを同時進行で読んでいる満足感と、堂場瞬一初の「成長物語」という期待感から★★★★となりました。

今後の展開が楽しみですが、他のシリーズも早く読まないと。

−−−−−



事件の容疑者が持っていた「アビレックスのダッフルバッグ」です。

どのような物かわからなかったので調べてみました。堂場瞬一はミリタリーブランドが好きのようですが、これも作者の好みなのだと思います。

と言いつつ、私もミリタリーものは好きなので、買ってしまいそうで怖いです…。

−−−−−−−−−−−−−−−



中公文庫の表紙は、抽象的な絵柄のものが多いのですが、この表紙はちょっと毛色が違います。上のビルは、丸の内警察署付近と思われますが、下半分の街は、ズバリ、新橋駅のSL広場前ですね。スパゲッティの店「パンチョ」のナポリタンの看板が目立っていますね。


印象に残った言葉

他の先輩たちからは「お前らゆとりは……」とすぐに揶揄されるのだが、だいたい「ゆとり世代」は、自分たちより少し年下である。一之瀬は円周率を「3.14」で習った。一緒くたにされるのはたまらない。

−−−−−

Wikipediaによれば、ゆとり世代」とは、いわゆる「ゆとり教育」を受けて育った世代のことで、具体的には1987年4月2日〜2004年4月1日生まれを指すとのことです。

そして、「ゆとり教育」の象徴のように言われることの多いのが、「円周率=およそ3」ですが、私もそれを初めて知った時は唖然としたのを覚えています。

「ゆとり」と思われること、すなわち、「ああ、円周率=3の人ね」と思われるのがイヤなのだと思いますが、だからと言って、ドヤ顔で「円周率は3.14で習いました!」と言われてもねぇ。

それに、3.14はともかく、1、2年違うからといって、考え方が大きく異なるというわけもなく、ある程度、歳の離れた若者は、みな同じに見えるというのは、いつの時代にも共通だと思います。

「プライベートなことでは突っ込まないのが、お前さんたち、ゆとり世代を上手くコントロールするコツらしいな。」

「そもそもゆとり世代じゃないんですけど。」

「お前さんがそう言うのは勝手だよ。でも、俺から見れば、ゆとりの特徴が出まくりだけどな。」


とまあ、藤島の感想は至極もっともなことだと思いますが、ちなみにこんなこと言っている藤島ですが、48歳ということは、いまでは死語になりましたが、1980年代には「従来とは異なった感性や価値観を持っている」という意味で、「新人類」と呼ばれた世代です。

「新人類」と「ゆとり」のコンビ。けっこう気が合うのでは?



※ブログ内の関連記事(堂場瞬一)

堂場瞬一 / 著作リスト

(ブックレビュー / 刑事の挑戦・一之瀬拓真シリーズ)
ルーキー

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※関連サイト

堂場瞬一 with 中央公論新社


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