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zoom RSS マリアの骨 浅草機動捜査隊 (鳴海章)

<<   作成日時 : 2014/05/22 18:56   >>

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満足度4 ★★★★

実業之日本社文庫
初出版 2011年
読んだ回数 1回








実業之日本文庫−裏表紙の紹介文

機動捜査隊・浅草日本堤分駐所のベテラン辰見悟郎は相棒の新米刑事・小沼を残し、管轄外の火葬場にいた。絞殺された娼婦・大川真知子の骨をその娘と拾っていたのだ。八カ月前に起きた女性殺害事件との関係性を疑う辰見らは現場の聞き込みを始めるが、また新たな女性絞殺死体が…機捜隊コンビの奮闘を人間味豊かに、かつリアルに描く警察小説の傑作。


感想、みたいなもの

鳴海章の「浅草機動捜査隊シリーズ」第一作。

本の売れない時代に創刊された「実業之日本文庫」を応援するということで、自分の範疇に入るものについては、なるべく購入するようにしていますが、その流れで購入した「オマワリの掟」で、鳴海章という作家を知りました。

調べてみると、ナント、私の大好きな北海道出身で、著作には、北海道の「ばんえい競馬」をテーマにした「輓馬」や、北海道を舞台にした「風花」などがありました。

出身地の帯広を舞台とした「オマワリの掟」が面白かったことで、鳴海章は好きな作家のひとりになりましたが、なんせ積読が多く、なかなか順番が回ってこないうちに、「浅草機動捜査隊シリーズ」は実業之日本文庫から、すでに4作が出版されています。

1.マリアの骨 (2011/02)
2.月下天誅 (2012/12)
3.刑事の柩 (2013/08)
4.刑事小町 (2014/04)
 (2014/05/22現在)

※以下、シリーズ継続中
5.失踪 (2014/12)
6.カタギ (2015/04)
7.刑事道 (2016/01)


すぐにドラマ化されてしまう近年の情勢下では、早く読んで自分のイメージを確立することが求められるわけですが、堂場瞬一の新作、「ルーキー」に続いて、「マリアの骨」に取り掛かったところ、偶然、こちらも新人刑事の物語でした。

小沼優哉は、交番勤務を皮切りに八年間所轄署地域課での実務の後、任用期間を経て、機動捜査隊日本堤分駐所の刑事となりました。

年齢の記載はありませんでしたが、大卒と仮定すると30〜31歳といったところでしょうか。「ルーキー」の一之瀬拓真と比べると、警察官としてのキャリアは長いことになります。

「ルーキー」の一之瀬拓真が警官を志したのが、「安定志向+なんとなく」というのと同じように、小沼優哉も、

「子供の頃にテレビドラマで見た、拳銃や散弾銃を撃ちまくる刑事たちに憧れ、警察官を目指すようになった。」

というように、使命感に燃えてなるべくしてなった刑事というわけではありません。

警官になった後も、

「デカなんて、仕事がきついだけで給料は安いし、ちっともいいことないよ。二ヶ月三ヶ月休みなしなんて当たり前だろ。奴らを見てると仕事中毒じゃないかと思う。今どき刑事なんて流行らないぜ。」

という先輩警官の言葉に心揺れながらも、とりあえず刑事としての第一歩を踏み出した小沼ですが、そんな小沼の指導係としてコンビを組むのが53歳のベテラン刑事、辰見悟郎巡査部長です。

「ルーキー」と似たようなシチュエーションですが、読んでみると「新人刑事の成長物語」的な部分はさほど強くなく、どちらかというと、相勤者の辰見の方が主人公といった雰囲気でした。

ちなみに「相勤者」と書きましたが、二人一組で行動する刑事の、いわゆる「相棒」のことですが、警察用語としては相棒ではなく「相勤者」と呼ぶようです。

鳴海章は、警察小説を書く前は、主に「航空サスペンス」や「スナイパー・シリーズ」といった自衛隊もの?を書いていたのですが、とにかく描写がマニアックという評判で、細部の名称や用語などにコダワリがある作家のようです。そんな作家のコダワリが「相勤者」という言葉からも垣間見られると思います。

ただ、あまりにも専門用語を多用すると、くどくて読みにくい文章になることがありますが、2作品を読んだ段階では、やたらディティールは細かいけれど、マニアックというより、リアリティがあると感じさせる良い効果をもたらしていると思いました。

−−−−−

小沼が配属となった「機動捜査隊日本堤分駐所」ですが、浅草警察署管内、日本堤交番の二階にあります。

日本堤交番というのは、



浅草の北東部に位置する四階建て、駐車場付きのビルは交番である。かつては東日本一のマンモス交番といわれ、所轄署における一つの課と同じ扱いを受けていた。建物は、完全装備の機動隊一個中隊が三、四日は楽に泊まれるだけの設備を備えていた。しかし、街頭でのデモや労働者たちの騒乱が今は昔の物語となり、現在ではふつうの交番と変わらない格になっている。

とのことで、実際に見たことがありますが、写真のようなパッと見では交番というより警察署そのものに見えます。

また、機動捜査隊というのは、

機捜隊の主な任務は初動捜査にある。殺人、傷害、窃盗、放火などといった刑事事件はいうに及ばず、覚醒剤事犯、少年犯罪などの生活安全課の担当事件でも真っ先に現場へ駆けつける。現場保全を行い、周辺の捜索や聞き込みを行うが、現行犯を除いて大半は犯人逮捕までいたらず所轄署の刑事課、生活安全課などに引き継いだところで仕事が終わる。

それでも新米刑事にとっては幅広く事件を見られることもあって、研修を終えた後に配属されるのが不文律になっていた。


というように、事件の最初の捜査だけで、通常は事件の解決までは関係しない、なんとなくモヤモヤ感が残りそうな仕事です。乃南アサの「音道貴子」も警視庁機動捜査隊所属でしたが、特捜本部が設置されると、応援という形で、その後の捜査にあたることもあり、今回の事件もそのケースです。



舞台となる浅草は、東京のいわゆる下町で、「東京スカイツリー」の完成によって再び賑わいを見せることになった地域です。

私は東京の西地区に住んでいますが、その昔、浅草に住んでいる彼女がいて、何度も浅草界隈を訪れたので、登場する地名には懐かしさも感じました。ずっとご無沙汰だったのですが、「東京スカイツリー」の完成に合わせて、地域の再開発というか整備がおこなわれたのでしょう、昨年訪れたときの印象では、表向きはかなり変わったように思います。

そんな、「今と昔が融合する」浅草界隈ですが、ネットで、「小説の舞台[マリアの骨] - Google マップ」という、小説内で登場する場所をマッピングしたものを見つけました。


小説の舞台[マリアの骨] - Google マップ

このような感じで場所がわかるので、浅草に馴染みがない方の参考になると思います。

−−−−−

本書では、連続殺人事件を捜査する辰見と小沼の活躍が描かれますが、浅草という場所の効果なのか、人情というか下町情緒というか、そういった「しっぽり感」のある、味わい深い作品になっていると思います。

作者の鳴海章は、今は帯広に住んでいるようですが、日本大学法学部卒ということで、東京暮らしを経験しています。もしかしたら浅草近辺に住んでいたのではないかと思わせるようなリアルな下町描写です。

また、辰見も、バリバリのタフガイではなく、53歳という年齢による疲れを隠せない人物として描かれていて、それも浅草の雰囲気となじんでいるような気がします。



文庫の帯にも、

「警視庁(ホンテン)にはわからねえよ、この街は−−。」

とあるように、確かに下町・浅草には、新宿、渋谷、六本木、あるいは丸の内界隈といった地域を舞台とする警察小説にはない、独特の世界があるように思います。

読んでいる警察小説のシリーズもたくさんありますが、東京、それも大都市を舞台にしたものが多いと思います。それらを並行して読み進める場合に、地域の特色が織り込まれていると、飽きずに楽しめるので、浅草を舞台とする本シリーズは、マンネリ化を防ぐ意味でも貴重なシリーズになりそうです。

と言いつつ、浅草機動捜査隊シリーズは2作目から「文庫書き下ろし」となったので、同時進行で読み進めることにした「ルーキー」のように旬を味わうことができるように、次作の「月下天誅」も期間を空けずに読んで、早く追いつこうと思ったりもします。

元々は、その作家の作品を「最初から読む」主義ですが、「ドラマ化される前に、自分のイメージを確立する」ということの方が重要になったので、今後も未読のシリーズに手を出すことが多くなると思いますが、先日、「楯岡絵麻シリーズ」を2作続けて読んだところ、作品イメージの構築度合いが高かったように思いました。

1作だけ読んでも、次を読むまでにかなりの時間がかかってしまう現状では、せっかく構築したイメージが次に読む時に薄れてしまっているように感じます。ドラマ化される前に自分の想像力を確定するという目的を考えると、最初に2作続けて読むことが良さそうに思います。

浅草機動捜査隊シリーズは、1作で充分にイメージ構築はできましたが、すぐにイメージが薄れてしまわぬように、やはり次作は続けて読んでみたいと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−



文庫の表紙(左)の正面には、「東京スカイツリー」が聳え立っていますが、ジョイ・ノベルス版(右)が出版された2011年2月には、まだ完成していなかった(開業は、2012年5月)からでしょうか、東京スカイツリーではなく高層ビル群が描かれています。



そのジョイ・ノベルス版ですが、何が描かれているか分かりにくいので大きな画像にしてみると、どうやら、昔ながらの浅草の裏通りから見た構図のようです。

再開発されたとは言え、ちょっと裏手に入れば、このような昔のままの雑然とした町並みは、当然今でも残っています。そしてそのような下町の風情は、私を含め、ある程度の年齢の者にとっては、懐かしさを感じる場所でもあるのです。


印象に残った言葉

振り返る間もなく、女がやって来て、小沼のとなりにどっかと座りこんだ。

「辰兄ぃ、来てるんだったらちゃんと言えよな。」

辰兄ぃ? 小沼は入ってきたばかりの女をまじまじと見た。

鋲打ちした黒の革ジャンにショッキングピンクのTシャツ、ぼろぼろのジーパンを穿いている。脱色し、赤紫色に染めた髪が逆立っていた。耳たぶには銀のしゃれこうべがぶらさがっていた。濃いアイシャドーで縁取られた目が小沼に向けられる。

「てめえ、何見てんだよ。」


−−−−−

辰見の家の近くにある、行きつけの店「生馬軒」で、辰見と小沼が飲んでいるところに現れたマキ。

マキは、浅草に住む伝説のヒットマンの孫で、黄色のフォルクスワーゲンを乗り回す、元深川の芸者ですが、その艶やかさに一目ぼれする小沼。

このシーンに描かれたマキの、跳ねっかえりで気が強そうなところからの連想で、大沢在昌の「新宿鮫シリーズ」に登場する、鮫島の恋人、晶を思い出しました。

気の強い女が好きという(Mか!)小沼が惚れてしまうのですが、辰見との関係が気になります。とりあえず、物語にはヒロインが必要ですが、お決まりの女刑事でなくて良かった。

「つや消しの町」浅草に色を添えるマキ。次作以降、マキと小沼、あるいは辰見との関係がどうなるのかも楽しみです。



※ブログ内の関連記事(鳴海章)

鳴海章 / 著作リスト

(ブックレビュー / 浅草機動捜査隊シリーズ)
マリアの骨

※関連サイト

小説の舞台[マリアの骨] - Google マップ


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