誤殺 (リンダ・フェアスタイン)

満足度2 ★★
ハヤカワ・ミステリ文庫
原題 Final Jeopady
翻訳者 平井イサク
初出版 1996年
読んだ回数 2回
★ ハヤカワ・ミステリ文庫-裏表紙の紹介文
アレックス・クーパーはマンハッタンの地方検察庁で性犯罪訴追課を率いる美貌の女性検事補。ある日、アレックスの別荘に滞在していた親友の女優イザベラが無残な射殺体となって発見された。はたしてアレックスと間違われて犠牲になったのか? 捜査を開始したアレックスの身辺に出没する怪しい影。やがて予想外の容疑者の出現に、彼女は絶体絶命の窮地に立たされた! 卑劣な犯罪に敢然と立ち向かうニュー・ヒロイン登場
★ 感想、みたいなもの
まず、全然関係のない話からですが、この記事を書こうとして、「ごさつ」と入力して変換したら、まず、「五冊」と表示されました。
その瞬間、思い出したのが、かなり前のことですが、「誤認逮捕」と聞き、「えっ、1度に五人も逮捕しちゃったの ? ! すごいねー。」と言った女性のことです。
ありそうなネタ話としては、わりと有名なものだと思いますが、まさか本当にそう思ってしまう人が自分の近くにいるとは思わなかったので、驚いた記憶があります。
ちなみに私は、「生まれついての天然キャラで、心なごませてくれるB型の女性」が大好きで、B型女性の言動を日々研究する「B型ウォッチャー」なのですが(←そんなこと誰も聞いてない?)、その女性も当然のごとく「B型」。
もし彼女に、「1週間かかって、ようやく『誤殺』読み終わったよ。」と言ったとしたら、きっと、「えっ、1週間で五冊も読んじゃったの ? ! すごいねー。」と言ってくれることでしょう。
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このシリーズの主人公は女性検察官の「アレックス・クーパー」。
元々、「V・I・ウォーショースキー」や「キンジー・ミルホーン」など、女性探偵ものが好きだったので、同じように女性が主人公である、パトリシア・コーンウェルの「検屍官シリーズ」と、この「検察官シリーズ」は、以前から気になっていたのですが、ブログを始めるのをきっかけに、読む作家の数を少し広げようと思い、読んでみました。
まず最初に、全体的な感想を言うと、あまり好みの作家ではありませんでした。
翻訳物を読む場合、外人の名前を覚える(というか、区別する)のが苦手で、初めて読む場合はいつも苦労します。シリーズものが好きなのは、2作目以降は、少なくともレギュラー登場人物の名前を覚えなくて済むという利点があるからです。
そういう「名前を覚える」という観点で言うと、本作では必要以上に苦労しました。
日本人の場合、氏名は苗字で語られることが多いわけですが、外人の場合、苗字より名前、さらには略称が入り乱れて使われるので、非常に覚えにくいのですが、この作品は、それが過度に多く、誰のことをいっているのか、横文字が苦手の私には慣れるまでが大変、というか、読み終わるまで慣れることはありませんでした。
それに加え、主人公の「アレックス・クーパー(以下、アレックス)」のキャラクターが好みではなく、というか、明らかに嫌いなタイプで、読むのが苦痛になる時もありました。
アレックスは、女性検事補ですが、強姦など、性犯罪の専門家で、これは、作者のフェアスタイン自身がそうなので、その経験を元に書かれたものです。
基本的に、「被害者である女性の弱い立場を守る女性検察官」、そういう、女性の味方的にアレックスは描かれていますが、性犯罪というデリケートな問題を扱うには被害者の精神面のフォローなど、丁寧に事を進める必要があり、非常に多忙な業務になることはわかります。
わかるのですが、あまりにも、「私はこんなに頑張っているのよ。」というのが強すぎて閉口しました。
自分の仕事がいかに大変かを、実にくどくどと語ってくれるので、「もう、わかったからっ!」と言いたくなりました。
アメリカでは、主張することが美徳かもしれないが、古い日本人の私は「男は黙って」(主人公は女だけど)の方が好きなので、この主人公は好きになれませんでした。
そして、この主人公のイヤなところは、「女だけど頑張っている。」という意識が強いこと。そりゃ、検察という男社会で苦労しているのはわかりますが、弱音、それも女々しい弱音を吐きすぎます。
「金持ちで、頭が良くて、美人で、権力も行使できる。」
そういう設定なので、十分すぎるほど、周りの男たちからもチヤホヤされているように見えるのですが、これ以上、何を望むのだと言う気がしてきます。
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また、権力を行使できる立場にいる者は、次第に、「正義の名の下に、犯罪者を裁くという行為」に酔い始め、国民の権利を代行しているのではなく、自分が神になったと勘違いしがちですが、この主人公にもその雰囲気が見え隠れします。
例えば、警察官ではない作家が、警察のことを調べ、それを元に本を書く場合、視点は、基本的に一般人寄りになると思います。つまり、警察は本来こうあって欲しいという願望が盛り込まれるわけです。

しかし、作者のフェアスタイン自身が検察官で、検察官の話を書いているので、いくら作者が気をつけても、どうしても視点は検察官の視点になり、「被害者は次の犯罪を防ぐため、供述に協力するべきだ。」のごとく、私から見ると、どうしても上から目線を感じざるを得ないのです。
ハードボイルドの、「権力はもたないけれど、それでも戦う」姿勢とは根本的に違うわけで、この主人公に感情移入する気にはなりませんでした。
私はやっぱり、ヴィクやキンジーやスタンリーのような、権力の中枢から外れたアウトサイダーの方が断然好きだし、応援したくなるし、自分に置き換えて、行動の指針にしようという気にもなります。
「だったら、読むなよ!」という声が聞こえてきそうですが、それでも、もう少しこのシリーズを読み続けてみようと思うのは、「権力を持つものの思考回路や精神構造」を理解することは、逆の立場にいる者にとって役に立つから。
今年、明るみに出た、「検察の証拠捏造」などを考えると、権力の内側にいる人について知ることは非常に大切なことなので、反面教師とまでは言わないけれど、そういう意味で、このシリーズには興味があります。
悪く書いてばかりいますが、ストーリー的にはまずまずで、自分の別荘を貸した女性が殺され、犯人の狙いは自分だったのか彼女なのか(誤殺だったのか?)ということから、自らの周囲の人間をも巻き込みながら、事件は進んでいきます。
最初は読みにくかったものの、2度目に読んだ時は名前も慣れたし、アレックスがどういう人物かも理解していたので、比較的楽しんで読むことができました。ただ、最後の事件解決のシーンは、「主人公には決して弾は当たらない」的なもので、ちょっと納得がいきませんでした。(そのあとまた、アレックスが「かよわい女」を演じてメソメソするし…。)
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さて、恒例の?表紙批評ですが、このシリーズに使われている、絵画的な表紙は、かなり私好みです。
ハヤカワのトール版では改悪ばかりが目に付くので、このシリーズの表紙が変更される前に、全部揃えてしまおうと考えていますが、この先、新作は出るかもしれませんが、そんなに人気シリーズでもなさそうなので、これ以上の重版があるかどうか、いらぬ心配かもしれません。
描いているのは中島美弥さんというイラストレーターですが、絵画タッチのイラストの、厚みのある色彩が気に入りました。
彼女のサイトでは、「女性検事シリーズ」の表紙をはじめ、彼女の他の作品も見ることができます。また、作者が自分の作品に関して語る動画もアップされています。興味のある方はどうぞ。
★ n u a n c e , -- Nakajima Miya(中島美弥さんのサイト)
★ 印象に残った言葉
「お客さん、弁護士?」
「そうじゃないわよ。証言するために裁判所へ行くの。強姦されたのよ。」
アレックスがタクシーの運転手に言うセリフです。
裁判所の前でタクシーに乗ったり降りたりすると、たいていの運転手に同じことを聞かれるのにウンザリで、「このように言うと、間違いなく話が途切れ、目的地に着くまで、書類に目を通すことができる」のだとか。
会話が発展しないように、運転手が聞きにくい話題を選ぶなら、「離婚調停中なの。」とでも言っておけば良いのです。
口では、強姦被害者の気持ちを理解し、デリケートに扱わないといけないとか言っていますが、このような言葉を吐けるということから、アレックスの、ひいては作者の強姦被害者に対する意識の本質(しょせん他人事)がうかがえてしまい、興ざめでした。
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□リンダ・フェアスタイン / 著作リスト
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□リンダ・フェアスタイン公式サイト
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