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zoom RSS 熱欲 刑事・鳴沢了 (堂場瞬一)

<<   作成日時 : 2011/06/27 21:25   >>

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満足度4 ★★★★

中公文庫
初出版 2003年
読んだ回数 2回


中公文庫−裏表紙の紹介文

掏摸(スリ)や詐欺師を追うなんて俺の仕事じゃないと思ってきた。だが、奴等は老人のささやかな欲望と不安につけ込み、金を奪うだけじゃない。被害者の生活も家庭も壊していく。この事件、仕掛け人を捕まえなければ意味がない。被害者が加害者でもあるマルチ商法の捜査は困難を極めた。そして、事件の背後にNYの中国系マフィアの存在が浮かび上がる――!

感想、みたいなもの

刑事・鳴沢了シリーズ第3弾です。

新潟県警を退職後、前作では警視庁多摩署で刑事として再スタートをした鳴沢。今回は青山署の生活安全課へ異動となりました。

今までの、殺しを扱う刑事課とは勝手が違う部署へ来たものの、鳴沢は、殺しの方が重大犯罪と思っているので、何となくやる気が感じられません。

ネズミ講のような悪徳商売に騙された人たちが警察署へ押しかけ、その対応をした後も、

「うまい儲け話を持ちかけられ、欲に目がくらみ、結局は金に釣られて騙されたということに尽きるのだ。」

という感想を持ちます。

その手のニュースを聞くと、しょせん他人事ですから、一般人がそういう感想を持つのは確かですが、鳴沢さんアンタ、刑事がそう思っちゃ、警察官としての資質を疑われるでしょう!

それはともかく、今回は、マルチ商法を追いかけつつ、ひょんなことから担当した家庭内暴力事件、ロサンゼルス留学時代の友人(ニューヨーク市警の刑事)の来日と、事件はもつれ合いながら進んでいきます。

同じ署の先輩刑事の横山に、殺しではない事件の捜査方法を教わり(といっても、教わるという態度ではないが…)ながら、まあ、彼なりに頑張ってはいくわけです。



このシリーズを最初に読んだ時は、「正義感に燃える、信念を貫く刑事の物語」かと思いましたが、何作か読み進めるうちに、そうではないと思うようになってきました。

鳴沢の言うことは最もらしく、まさに「正義感〜」と書いたとおりなのですが、実は非常に突っ込み所の多いキャラクターなのです。

「昔は飲んでいましたよ。でも刑事になった時にやめました。」
「どうして。」
「いつ呼び出しがあるかわからないから。肝心な時に酔っ払ってたら、犯人を追いかけられないでしょう。」


という会話からもわかるように、仕事に対しては真摯な姿勢を崩さず、ストイックな鳴沢なのですが、その最大の弱点というか、突っ込み所として、

「こんな堅物のくせに、女にはユルい。」

ことが挙げられます。

別に女好きの刑事が悪いわけではありません。

問題なのは、鳴沢の公私混同が激しいところなのです。

第1作では、目撃者が学生の頃好きだった同級生で、これは捜査の一環だと自分を納得させ、職務中に喫茶店でキスしたり、前作では、相棒の女性刑事と、距離を保たねばと思いつつ、車の助手席の姿を見て、よからぬ想像をめぐらせたりします。

そして今回も、相変わらず女にユルイです。

同僚の刑事と事件の捜査に向かい、聞き込みをした後の車の中の会話です。

「内藤優美さん。けっこう可愛い娘でしたよね。」
「余計なことを言うな。彼女は事件の関係者だぞ。お前の個人的な感想なんか関係ない。」
「硬いなあ、鳴沢さん。可愛い娘は可愛い、それは誰が見てもわかることでしょう。」
「そろそろ黙らないと殴るぞ。」


と言いつつ、もちろんこの時点で、鳴沢も彼女のチェックは終えています。

「綺麗なハート型の顔で、目が大きい。丸い鼻と大きめの口は、笑ったらかなり魅力的に見えるかもしれないが、私がそれを拝む機会はなさそうだ。」

ちなみに、鳴沢が、「拝む機会はなさそうだ」と言っているのは、「拝む機会を、何としても見つけなければ」と同義であることは言うまでもありません。

そして、優美に手を出したことが、後でこの同僚にバレてしまうと、

「鳴沢さん、あの娘と何かあったんですか。」
「あの娘って誰だよ。」
「またまた、とぼけて。」
「余計な詮索をするな。」
「事件の関係者でしょう。まずいんじゃないですか。」
「あの件はもう終わってる。」


オイオイ、さらに別の事件にも絡んできているのに、勝手に終わらせるなよ。

さらに、仕事上、悪い知らせを伝えに行かねばならず、それを伝えた後に、

優美 「警察はどうしていつも悪い知らせしか持ってこないの?」

一時的な怒りから出た言葉ではなく、これが彼女の本音なのだろう。警察は悪魔の使者であり、常に不幸を運んでくる存在なのだ、と。

私は初めて、自分が警察官であることを悔やんだ。


オイオイオイオイオイ!

オマエ、確か、「オレは刑事になったんじゃない、刑事に生まれたんだ。」とか、ホザいてたんじゃなかったっけ?!

と、まあ、人間らしいと言えば人間らしいのかもしれないし、基本的には悪い奴ではないのですが、う〜ん、こういう性格ってどうなんでしょう。

私は、正義感の強い鳴沢のようなタイプは好きですが、とても友人にはなれないと思います。

私は友人だろうが、間違っていることは間違っていることとして、きちんと指摘する性格なので、間近で鳴沢の言動に接していたら、絶対に衝突するでしょう。

綻びの多い鳴沢の理屈に対しても、理詰めでそれを指摘し、口では間違いなく勝てると思いますが、きっと、鳴沢を追い詰め過ぎて殴られることでしょう…。

というように、基本は応援しつつ、「熱いけれどもユルい男」の鳴沢に突っ込みを入れるというような読み方が定着しつつあります。

愛すべき、ハードボイルド軟派刑事、それが鳴沢了なのです。

ちなみに、今回、鳴沢がちょっかいを出す女性ですが、これがまた気が強いというか、無意味に攻撃的で、そのくせ女を主張してくるという、私の嫌いなタイプです。

前作の小野寺冴も攻撃的でしたが、今回の優美のようにただ感情的になるのではなく、芯は通っているので、私は冴の方が好きです。

優美と冴を比べたら絶対に冴の方が女らしいと思いますが、(優美は女々しい感じ)、そんな冴の良さがわからない鳴沢は、きっとアホなのでしょう。

どうやら優美は、鳴沢の恋人として、次作以降も登場するようですが、冴の方が好きな私としては、浮気しそうな鳴沢に冴はもったいないので、コレデイイノダ!

★★★



文庫の表紙(左)は、タイトルの熱欲(=金欲)をダイレクトに示した札束の表紙です。これに対し、単行本(右)は、鳴沢と、友人のニューヨーク市警の刑事にスポットを当てた作りですが、どちらが良いとも言えない普通のデキでしょうか。

次作からは「文庫書きおろし」となり、表紙の比較はなくなりますが、この時期の堂場瞬一の刑事ものでは、単行本で売るだけの力はなかったということなのでしょうか?

「単行本で出し、数年後に文庫化」というパターンがあり、何となく、単行本の方が格が上といった風潮があります。

確かに、装丁のしっかりした単行本を本棚に並べるのは魅力的ですが、それを認めつつ、金額的にもスペース的にも、文庫を選択するしかない私としては、文庫書きおろしの多い堂場瞬一は好きな作家なのです。


印象に残った言葉

「私はゆっくりとカレーを食べた。サラダは慎重に野菜だけを拾って齧る。ベーコンビッツはサラダにコクを与えてくれるが、実態は脂肪の塊なのだ。」

他にも、チーズは太るから、サンドウイッチから抜いてもらうとか、ポップコーンは油の固まりだとか、あ〜、うっとおしい奴っちゃ!



※ブログ内の関連記事(堂場瞬一)

堂場瞬一 / 著作リスト

(ブックレビュー / 刑事・鳴沢了)
雪虫
破弾
熱欲
孤狼
帰郷

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
今までの2作と違って、どっしりと事件に取り組む感じが新鮮に感じる作品でした。北旅さんの記事を読んで何度か笑ってしまったんですが、確かに了って女性に弱いというかユルイですよね。それなのに固いこと言って・・。今回の彼女は、私は結構好みなんです。同性に好かれるタイプかも?口は軽いですけどね。
次の感想も楽しみにしています。
DONA
2011/06/30 14:07
★>DONAさん
コメントありがとうございます。

基本的に鳴沢は好きなんですが、ストイックなくせに、女がからむと信念をあっさり曲げるところが面白過ぎます。

女に「甘い」のでも「弱い」のでも「だらしない」でもなく、何となく「ユルい」という表現になりましたが、まあ、人間らしいと言えばそうなんですけどね。

由美は、冴に比べて、少しヒステリックな感じがして苦手なんです。冴は意識的にやっている感じですが、由美は感情を抑えられない感じ。

男は理性、女は感情に従って行動すると言われるので、女性に好かれるタイプというのはわかる気がしますが、私は理性によるところが人より強いタイプなので、苦手意識が強いのかもしれません。鳴沢は一見理性的ですが、よくよく見るとかなり感情に支配されているので、由美と合うのかもしれませんね。

第4作も再読終了しましたが、由美はすっかりおとなしくなってしまってビックリでした。
北旅@管理人
2011/07/02 08:27

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