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zoom RSS 孤狼 刑事・鳴沢了 (堂場瞬一)

<<   作成日時 : 2011/08/14 17:34   >>

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満足度5 ★★★★★

中公文庫
初出版 2005年
読んだ回数 2回


中公文庫−裏表紙の紹介文

一人の刑事が死に、一人が失踪した。本庁の理事官に呼ばれた鳴沢了は、新たな相棒と共に消えた刑事の捜索を命じられる。調べを進めるうちに明らかになる刑事達の不可解な行動。不審を抱く了の前に謎の組織が立ちはだかる。執拗な妨害、愛する人への脅迫――警察を辞めた冴を巻き込み、事件は思わぬ展開を見せる――!


感想、みたいなもの

ここまで、「鳴沢了シリーズ」を4作読んできましたが、文句なしに今までの中で最高の出来だと思います。

過去の3作は、鳴沢が、その一匹狼的な姿勢を崩さず、見た目、空回りしている部分がありましたが、本作では、鳴沢の「個」に相棒刑事の「個」が加わり、さらには、過去の作品に登場した「個」も加わることで、初めて「チーム」の一員として機能する鳴沢が見られます。

また、過去3作では、堅物のくせに「女にはユルイ」性格から、捜査に関係する女性を次々に狙い、モノにしてきた鳴沢ですが、今回は新しい女を狙わず、前作で「逮捕」した優美とまだ続いているという展開も新しい!

「具合でも悪いのか、鳴沢!?」

と心配になってしまいますが、それはさておき、今回の鳴沢は、特命を受け、練馬北署の刑事「今(こん)敬一郎」と共に、刑事の失踪事件を捜査します。

捜査を進めるうちに、鳴沢と今(こん)の周辺にも、怪しい組織の影がちらつき始めます。誰が敵で誰が味方か疑心暗鬼の中、鳴沢の故郷であり、かつて在籍した新潟署の懐かしい顔も登場し、謎の解明に向かっていきます。

物語の結末は、特にあっと言わせるようなものではありませんが、今までの3作の結末が、何となく重くてスッキリしないものだったのに比べ、本作は、鳴沢がキッチリとオトシマエを付けてくれるので、けっこうスカッとする、良い結末だと思いました。



今回も、基本的に鳴沢は一匹狼的な姿勢を崩しません。しかし、過去の登場人物、それも、鳴沢を理解してくれる人たちが、鳴沢に協力し、支えてくれます。

第1作「雪虫」から、新潟県警の「カンエイさん」こと新谷寛英。
第2作「破弾」に登場した、女刑事の小野寺冴。
前作「熱欲」で鳴沢と共に捜査をした先輩刑事、横山浩輔。

それぞれ、読んでいてグッとくるシーンがあるのですが、例えば横山の場合、

「俺が死んだら、骨ぐらいは拾って下さい。」

「いや、絶対にお前を死なせはしない。お前はどう思ってるか知らないが、鳴沢了という人間は一人じゃないんだぞ。」


読んだ時の感動の邪魔をしてはいけないので、どんな場面かわかるようには書きませんが、このようなシーンが随所に盛り込まれています。

特に、小野寺冴が最後に言い残す言葉や、ラストシーンの「今(こん)敬一郎」との会話の場面では、かなり涙腺が刺激されました。

ということで、タイトルは「孤狼」ですが、決して内容は「孤独」ではなく、徐々に鳴沢の内面にも微妙な変化が起こり始め、今までとは少し違う鳴沢が見られました。

この後も、鳴沢シリーズは10作まで続くのですが、5作目以降をまだ読んでいない私には、今後の展開はわかりません、しかし、とりあえず1〜4作で、ひとつのグループとなっているような感じがしました。

★★★

今回鳴沢の相棒となるのは、「今(こん)敬一郎」という刑事です。

今(こん)は、実家がお寺で、いずれは親の跡を継いで住職になる予定なのですが、それまで社会勉強的に刑事をしているという変わり種。また、身長180センチあまり、体重115キロの巨漢で、回転寿司100皿をたいらげる大食い刑事です。

捜査中も、すぐにお腹を減らして、悲しそうな顔をして鳴沢に「何か食べたい」と訴えかけるような眼差しを送ります。食生活にも節制を心がけている鳴沢とは好対照で、「君の食べっぷりを見ていたら、食欲がなくなってきた。」と言わしめる存在。

また、すぐ熱くなる鳴沢に対し、将来は坊さんになることから、達観したように説教めいたセリフを口にして、「講釈はやめてくれ。」と、時として鳴沢をイラつかせたりします。

しかしその実、穏やかな雰囲気の奥に秘めた「熱さ」は相当なもので、怒らせたら誰も止めることのできない「暴走列車」と化すという一面もあります。

さらに、今(こん)は、小野寺冴と一緒に仕事をしたこともあり、何故か、冴を嫌って?います。

まあ、嫌っているというより、「暴走列車」の今(こん)をも凌ぐ暴走度を持つ冴なので、コンビを組み、度々そのトバッチリを受けた今(こん)は、それを根に持っているということなのですが。

と、かなり変わったキャラクターの今(こん)と冴、そして鳴沢という三者の絡みがとても面白く、大いに楽しめた作品でした。



さて、上の記述で、わざわざ「今(こん)」と、読みをふっていることでわかるように、「今」と表記された場合、「今(こん)」のことなのか、「現在」を示す「今(いま)」なのか、非常に分かりにくいです。

多くの文庫本は、最初に使われる時だけ、その漢字にルビがふってあると思います。

なので、最初に登場する時に「今(こん)」という名前とわかるのですが、やはり出版社もわかりにくいと思ったのか、その後も、ところどころでルビがふられます。

それでも、全てにふられるわけではないので、「今は、」と書かれると、一瞬、「あれっ?」と途惑うことが多く、物語の流れを妨げられるのが、とても気になりました。

例えば、私が少し前で書いた文章も、

さらに、今は、小野寺冴と一緒に仕事をしたこともあり、何故か、冴を嫌って?います。まあ、嫌っているというより、「暴走列車」の今をも凌ぐ暴走度を持つ冴なので、コンビを組み、度々そのトバッチリを受けた今は、それを根に持っているということなのです。

と、(こん)を外すと、かなり読みにくくなるのがわかると思います。

何故わざわざ「今(こん)」という名前にしたかですが、私は、今(こん)が、将来、坊さんになることから、「今(こん)東光」をイメージさせようとしたのではないかと思っています。



今の若い人には馴染みがないかもしれませんが、「今東光」は、天台宗の僧侶で、僧侶姿でTVに登場したり、雑誌で「辻説法」を連載したりと、異色キャラクターで有名でした。堂場瞬一と近い年代ならば、記憶してる方も多いと思います。

もしそうだとしても、「今(こん)」ではなく、「今野」でも、「近藤」でもよかったと思います。「近藤」なら、今(こん)と今(いま)を「混同」しないですんだのに……。

とにかく、「今(こん)」では、読みにくい事、この上なしです。

その破天荒なキャラのイメージは、確かに「今東光」とイメージが被りますが、そんな古い人物を引っ張り出さずとも、



「臨済宗光禅寺の住職」として、90年代に「霊能者」としてTVに登場した「織田無道」でもいいじゃないかと思ってしまいました。

「織田敬一郎」なら、読みにくくないし、「織田無道」をイメージできるので、狙いは達成できるはずです。

「甘いゾ、堂場瞬一!」

ついでに書いておくと、このような読みにくい名前、堂場瞬一は再犯なのです。

それは、「雪虫」に登場した「君(きみ)雅夫」。

納得したように君が頷く。

な〜んて、記述になるわけです。

鳴沢シリーズは、「孤狼」まで読んだ後にブログを始め、感想を書くために「雪虫」から再読したのですが、「堂場瞬一の奴、ここでもやっていやがった!」と思ったものです。

「君(きみ)」の場合は、事情聴取に登場するだけで、物語の主要人物ではないので、特に記憶に残りませんでしたが、今(こん)は準主役ですから、やはり避けるべきだったと思います。

★★★

本作では、「破弾」に登場した女刑事、「小野寺冴」が再び登場します。冴ファンの私としては、彼女が登場するというだけで盛りあがったのですが、やっぱり「冴」は「いい女」ですね。

思わぬ再会に、鳴沢の心は乱れますが、今のところ、(一応は)優美一筋の鳴沢は、

誰かを好きになるということは、別の誰かを忘れることに他ならないからだ。優美がいる限り、冴が私の心に戻ってくることはない。

と、自分の気持ちを鎮めようとします。

しかし、

途端に電話が鳴りだす。冴か――いや、まさか。一瞬、冴ではないかと期待してしまったことに気づいて、胸の中で小さな嵐が渦巻く。

と、やはり、女好きの本能を抑えることができません。

「やっぱり、鳴沢はこうでなくっちゃ!」

そして、優美の家の警備を、あろうことか冴に依頼する鳴沢。

さすがに、自分を無神経なヤツと思い、気がとがめたのか、冴に言い訳をする鳴沢ですが、

「引きずるのね、鳴沢は。」

「君は引きずってないのか。」

「あなた、一生のうちで何人の人を好きになるつもり?」

「分かるかよ、そんなこと。」

「私は、あなたにとって、たった一人の女でも最後の女でもなかった。それだけのことじゃない、それは私も同じだけど、よくあることでしょう。」


と、冴に軽くいなされてしまいます。

そして、

ずいぶんあっさりしたものだ。女性の方が、過去を振り切るのは上手いのだろうか。

な〜んて、トンチンカンなことを思うのですが、冴がまだ鳴沢のことを好きなのは、その言動からしてわかりそうなのにねぇ〜。

まあ、かくいう私も、女心がわからない点では鳴沢に負けず劣らずという自覚はあるので偉そうなことは言えません。

それはともかく、冴ファンの私としては、冴は鳴沢にはもったいないので、このまま優美と一緒でもいいし、別の女性に乗り換えるのでもいいので、もう冴にはちょっかい出さないでくれと願わずにはいられません。

それより、堂場瞬一には、冴のキャラクターをいかし、サラ・パレツキーの「ヴィクシリーズ」や、スー・グラフトンの「キンジーシリーズ」に匹敵するような、「女探偵・小野寺冴シリーズ」を書いて欲しいと思ったりしています。

どうですか? 堂場先生!

★★★



本作から、単行本を経由せず、文庫書きおろしとなりました。

この頃の堂場瞬一だと、おそらく単行本を出しても売れ行きがパッとせず、一人でも多く読んでもらい、名前を売るためにも、文庫へシフトしたということなのでしょう。

その名残?で、現在でも堂場瞬一は、いわゆる「いきなり文庫」で出版してくれることの多い作家なので、文庫派の私としては、やっぱり好きな作家なのです。(と言いつつ、積読多数、しかも最初から順番に読む派でもある私が、いきなり文庫の旬の恩恵に与ることはあまりないのですが…。)



さて、この表紙ですが、私には何だか良くわかりません。



耳のようにも見えるし、ミルククラウンのようにも見えます。

こんなことを書くと、もしかしたら、「○○に決まってるジャン! 北旅ってアホ?!」と思われているかも?

でも、こういうのって、わかって見ると、そうとしか見えないけれど、わからないとサッパリわからないものです。

ということで、私にはどうしてもわからないので、これが何なのか、お解りになる方がいらっしゃいましたら、コメント欄で教えていただけると嬉しいので、よろしくお願いいたします。


印象に残った言葉

「仲間うちで賄賂? ありえない。」

「あんたが優秀だってことはよく分かってる。ちょっとやり方を変えれば、先の道が開けるんだぜ。」

「やり方は変えるかもしれないけど、生き方を変えるつもりはないんでね。」

「馬鹿な男だな。いいか、物事には流れってものがあるんだ。それに乗っていれば、自分の思うとおりにやっていける。」

「そんなことのために、何かを犠牲にする気はありませんね。」

「何かって、何だ。」

誇り、独立心。答えは幾つでもある。だが、この男にそんなことを言っても無駄だろう。長いものに巻き取られていることにすら気づかない男には。



「やり方は変えるかもしれないけど、生き方を変えるつもりはない。」、か…。

う〜ん。含蓄のある、いい言葉です。

「やり方を変える」ことは、別に恥ずかしいことじゃないんですね。


女にユルいのが玉にキズ(というほどでもないけれど…)だけど、こういう「くさいセリフ」を吐かせたら、これほど似合うキャラクターは、そんなにいないと思う。

うん、やっぱり鳴沢了はカッコイイ。



※ブログ内の関連記事(堂場瞬一)

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(ブックレビュー / 刑事・鳴沢了)
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破弾
熱欲
孤狼
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
「近藤」なら「混同」しなくてすんだ!(笑)「言うと思った!」と素早くツッコミ入れておきました。

「今」さん、本当にややこしかった・・。実在の人物じゃないんだから何とかしろよ!と読みながら何度も言いましたもん。

シリーズ物って、だんだん面白くなくなるパターンが多いのに、刑事・鳴沢了シリーズはだんだん面白くなる気がします。ってまだ途中までしか読んでいませんけど。私もこの「孤狼」好きです。

冴さん、お気に入りですね〜。私はそれほど好みじゃないので、優美の出番が増えるのは嬉しいですが。冴が主人公の話だったら、ドロドロしそうで・・。どうですかね??
DONA
2011/08/14 17:59
★>DONAさん
コメント&ツッコミありがとうございます。

私は生まれも育ちも東京ですが、関西の「ボけ、ツッコミ」のノリの良さは大好きです。

新卒の時、半年ほど関西で研修して、兵庫の独身寮で過ごしたのですが、とりあえずつまらなくてもいいから、「言ってナンボ」の世界の洗礼を受けましたから。

黙っていると、「何、きどってんねん!」と白い目で見られますが、ツッコミを受けるのも、それはそれで、関西流コミュニケーションですからね。

そうそう。鳴沢が入ると、ドロドロしそうなので、「冴シリーズ」は、鳴沢は抜きでお願いしたいと思います。

あと、私が音無貴子に物足りなさを感じるのは、冴のような、十分女っぽいのにシャキッとしているタイプが理想だからだと思います。

ところでDONAさん。表紙が何なのか、わかりますか?
北旅@管理人
2011/08/15 13:46
改めて表紙をじっくり見直してみましたが、よくわからないですね〜。確かにミルククラウンにも見えますが・・。アクセサリーにも見えなくは無い??石が外れた台座の部分とか・・。何をイメージしているんでしょうね?
DONA
2011/08/16 16:33
★>DONAさん
返コメ、遅くなりすみません。
盆休みの間、自宅PCから、記事のアップはできるのに、何故かコメントができなくなっていました。

そうですか。DONAさんにも分かりませんか。

「もしかして、分からないのは私だけ?」というのが気になっていたので、安心?しました。

「晩鐘」を休み中に読んでいましたが、分厚くてまだ半分です。読み終わったらコメントしにいきます。
北旅@管理人
2011/08/22 08:38

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