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zoom RSS 十角館の殺人 (綾辻行人)

<<   作成日時 : 2011/09/17 15:49   >>

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満足度5 ★★★★★

講談社文庫
初出版 1987年
読んだ回数 1回







講談社文庫−裏表紙の紹介文

十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の七人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける! ’87年の刊行以来、多くの読者に衝撃を与え続けた名作が新装改訂版で登場。


感想、みたいなもの

以前から読もう読もうと思いながら、中々手を出さずにいた「綾辻行人」の「館シリーズ」。

「面白いんだろうなぁ。」とは思いつつ、読み始めたらシリーズを読破しないと気が済まない私としては、全四巻で2200頁もある、シリーズ7作目の「暗黒館の殺人」にビビリ、何となく敬遠していたのです。

しかし最近、「今邑彩」「辻村深月」を読むようになり、少し遠ざかっていた「本格推理」がまた楽しくなってきたところでもあるし、何と言っても、お気に入りの作家となった二人が影響を受けたであろう作家なこと、特に辻村深月の場合、「綾辻信者」ともいうべき大ファンということで、ようやく本気で読む気になったのでした。

そんなわけで、やはり第一作から読み始めることにして手にした「十角館の殺人」ですが、文句なしに面白かったです!!

−−−−−−−−−−−−−−−

半年前、殺人事件が発生した孤島・角島。

角島には、奇妙な形の十角館が残っているのですが、館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死。

その島を、大学のミステリ研究会のメンバー七人が訪れた時、アガサ・クリスティーの名作、「そして誰もいなくなった」を思わせる連続殺人事件の幕が切って落とされる、というストーリーです。

七人はミステリ研究会にふさわしく、海外のミステリー作家の名前がニックネームとなっています。

海外ミステリーは、登場人物の名前が覚えにくいと、このブログでも、何度か書きましたが、これは、ある程度馴染みのある名前なので識別は楽でした。ただ、逆に、大学生としての位置づけと連動させるのが難しく、整理したのが下のリストです。

ニックネーム (学部と学年) 代表作 (元になった作家名)

エラリイ (法学部3年) Yの悲劇 (エラリー・クイン)
ヴァン  (理学部3年) 僧正殺人事件 (ヴァン・ダイン)
ポウ   (医学部4年) モルグ街の殺人 (エドガ・アラン・ポー)
アガサ (薬学部3年) そして誰もいなくなった (アガサ・クリスティー)
ルルウ (文学部2年) 黄色い部屋の秘密 (ガストン・ルルー)
オルツィ (文学部2年) 隅の老人の事件簿 (バロネス・オルツィ)
カー   (法学部3年+1留) 帽子収集狂事件 (ディクスン・カー)



これらの作家の名前は良く知ってましたが、アガサ・クリスティーとエラリー・クイン以外は多分、読了した作品はないと思います。

中学の頃クリスティーに出会い、推理小説を読み始めたのですが、当時は「推理小説=海外」ということで、上記の作家の多くは、その作品を手に取ったものの、内容?文章?が読みづらかったのか、読了には至らなかったと記憶しています。

創元推理文庫に、「江戸川乱歩が選んだ(海外)ベスト10」の作品がラインアップされているのですが、その中に、上記七人のうち、ポーとオルツィを除く五人の作品が入っています。

いくつかの作品が新訳となって出版されていることもあり、昔の挫折をリベンジしようと、私も数作を積読にしているような状況なので、そういった意味でも、名前が覚えにくいということはありませんでした。

文中には、これらの古典作家に関係したシーンも挿入されていて、例えば、

アガサが、驚きの声をあげた。二枚の表には、どちらにも同じスートとナンバーがあったのだ。

「ハートの4、か。」

エラリイは満足げにほほ笑んだ。

「なかなか気が利いているとは思わないかい。」


エラリイが、アガサにカードマジックを演じてみせるシーンですが、何故、「気が利いている」、のか分からない人も、結構多いのではないかと思います。



解説するのも野暮と言えば野暮ですが、エラリー・クイーンの著作に「ハートの4」という作品がある、という、まあ、ただそれだけのことなんですけどね…。

−−−−−

ということで、古典的作家の名前が醸し出す、ミステリー的雰囲気が心地良く、物語のテンポの良さもあり、実に楽しく読み進めることができました。

「密室」状態の孤島と、島へ行かずに本土に残ったミステリ研究会の二人+探偵役の島田潔の視点が切り替わる構成も読みやすいですし、謎解き的にも、あっと言わせるラストが用意されていて、申し分のない出来だと思います。

細かい点を言いだしたらキリがないですが、しばらくして振り返ってみると、無理があると思わせる点もいくつかあったのですが、読み終わった時は、十分な満足感に浸れました。

また、読み終わって良く分かったのが、辻村深月は本当に綾辻行人に心酔していること、そして、良く研究しているということで、彼女のデビュー作、「冷たい校舎の時は止まる」は、ある意味、「十角館の殺人」をモチーフにした、綾辻行人へのラブレターのような気がしました。

デビュー作は絶対に「密室もの」で、「学園もの」で、……、と辻村深月がコダワリ抜いた結果が「冷たい校舎の時は止まる」なのだと思います。

−−−−−−−−−−−−−−−

 

表紙ですが、現在書店に並んでいるのは、2007年に出た新装改訂版(左)です。

著者による「新装改訂版あとがき」によると、

長年のあいだ慣れ親しんできた故辰巳四郎先生の装画ともこれを機にお別れし、新装版では同時期に刊行される『暗黒街の殺人』全四巻の文庫版と同じく、畏友・喜国雅彦さんに、「辰巳路線を継承しつつも、味わいのある新しい装画」をお願いすることにもなった。

とのことで、なるほど、旧版(右)の雰囲気を残しながら、現代風で、よりミステリアスな雰囲気に仕上がっていると思います。

ちなみに、「あとがき」によると、内容的にも若干の手直しを入れ、これで「決定版」とするということです。

 

単行本の表紙が左ですが、何を描いたものなのか、パッと見ではかわかりづらいです。

よく見るとガラス瓶のような感じで、おそらく「犯人」が「そして誰もいなくなった」を倣い、真相を記した紙を入れて海に流した瓶ではないかと思います。

右は、講談社が2003年10月から発行している、ヤングアダルト向けの書籍レーベル「YA!ENTERTAINMENT(ワイエー!エンターテイメント)」に「十角館の殺人」が組み込まれた時の表紙ですが、若い人向けということで、漫画チックなイラストで登場人物が描かれています。

ちょっと「オルツィ」が子供っぽ過ぎないか?という気もしますが、まずまず、登場人物がイメージできる表紙ではないかと思います。



エラリイ (法学部3年) Yの悲劇 (エラリー・クイン)
ヴァン  (理学部3年) 僧正殺人事件 (ヴァン・ダイン)
ポウ   (医学部4年) モルグ街の殺人 (エドガ・アラン・ポー)
アガサ (薬学部3年) そして誰もいなくなった (アガサ・クリスティー)
ルルウ (文学部2年) 黄色い部屋の秘密 (ガストン・ルルー)
オルツィ (文学部2年) 隅の老人の事件簿 (バロネス・オルツィ)
カー   (法学部3年+1留) 帽子収集狂事件 (ディクスン・カー)


名前を加えた画像と、先に記したリストを載せておきますので、これから読む方は、登場人物の整理に役立てていただければと思います。


印象に残った言葉

「僕にとって推理小説(ミステリ)とは、あくまでも知的な遊びのひとつなんだ。小説という形式を使った、読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の遊び(ゲーム)。それ以上でも以下でもない。

ミステリにふさわしいのは、時代遅れと云われようが何だろうがやっぱりね、名探偵、大邸宅、怪しげな住人たち、血みどろの惨劇、不可能犯罪、破天荒なトリック……絵空事で大いにけっこう。要はその世界で楽しめればいいのさ。ただし、あくまで知的に、ね。」


−−−−−

物語の冒頭、角島へ向かう船の中で、「エラリイ」が述べた「ミステリの楽しみ方」です。

最近は、いわゆる「本格推理」と呼ばれるジャンルのミステリは少なくなり、登場人物の心理や社会的問題を、現実に即して描く「警察物」や「社会派ミステリー」が主流となっている感があります。

私は、最近では、堂場瞬一、今野敏、佐々木譲といった警察小説を良く読みますが、子供の頃、クリスティーで推理小説にハマッた人間なので、基本的に本格物は大好きです。

推理小説とは、その設定が現実離れしていても、それはそれで舞台だと割り切り、しかし、重要なのは、作者が「フェア」であること。提示されていない条件などで欺いたりしないという暗黙の了解のもと、作品世界を楽しむものだと思っているので、この部分を読み、まさに「我が意を得たり」の思いでした。



※ブログ内の関連記事(綾辻行人)

綾辻行人 / 著作リスト

(ブックレビュー / 館シリーズ)
十角館の殺人

(その他)
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