渇き (T・ジェファーソン・パーカー)


満足度2.5 ★★☆

講談社文庫
原題 Triggerman's Dance
翻訳 渋谷比佐子
初出版 1996年
読んだ回数 1回






講談社文庫-裏表紙の紹介文

女性記者レベッカが射殺された。彼女の「婚約者」と「恋人」は容疑者を突き止めるが、その人物は元FBI捜査官だった。狂信的な秘密組織を率い、「自由の砦」に住む男のもとに潜り込んで復讐の機会を狙う「恋人」は、敵の娘を愛し始める――夢のように美しい大地を舞台に、追憶と哀愁が全編に漂う傑作サスペンス


感想、みたいなもの

「化けた」と言われる作家、「T・ジェファーソン・パーカー」の、化ける前の作品から順に読むという企画(?)第四作目。

今回は、「婚約者」を殺されたFBI捜査官が、「恋人」を殺された記者を犯人の元へ送り込み、復讐を企てるというストーリー。

「婚約者」と「恋人」が同じ女性というところがミソで、復讐という言葉でFBI捜査官ワインスタインと協力しつつも、「婚約者」を奪った形の記者メンデンは、復讐の矛先が、実は自分に向いているのではないかと疑心暗鬼になります。

まあ、この辺の心理描写が面白いと言えば面白いのですが、殺された女性レベッカの描写が少なく、どうして二人の男性の間で心が揺れ動いたのかが分からず、また、二人の男も本当にレベッカを愛していたのかと感じてしまうようなところもあり、もうひとつ感情移入できませんでした。

犯人は元FBI捜査官で、表向きは警備会社を運営しつつ、闇の警察のようなことをしています。

当然セキュリティーに長けているハズですが、それにしてはガードが甘く、「どう見たってスパイと分かるだろう!」と思う行動が見過ごされたり、ご都合主義的な展開も多くありました。

特にラストは、「セキュリティーの要塞なのに、どうやって?」という感が強く残り、不満です。

また、闇の警察ということで「善と悪」がテーマなのかというとそうでもなく、物語の発端となったマスコミの一方的な記事についてもさほど糾弾されず、作者が何を言いたいのかがチグハグな感じで、特にマスコミ嫌いの私としては、その点でも納得のいかない結末でした。

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ということで、今回の結論。

お分かりだと思いますが、まだ化けていません。

まあ、今回はわりとストーリーもしっかりしていて、デビュー作「ラグナ・ヒート」程度には楽しめたのですが、「600ページを超える文章を読ませておいてコレかよ!」という感じだったので、★★★からを引いて★★☆となりました。

400ページ程度にまとまっていたら★★★で良かったと思いますが、ダラダラした文章で、結局何が言いたいのか良くわからないところは相変わらずです。

それでも雰囲気は少し変わってきて、この作家得意の、全編を包む「哀愁感」には磨きがかかり、「化ける」兆しはあったようにも思います。

ただ、前にも書いたように、「化ける前」を確認しようと思っている方以外にはオススメしません。

次に読む予定は、女刑事マーシが初登場する「ブルー・アワー」ですが、シリーズ化されているので、少しは面白いかもと期待しておきます。(棒読み)

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序盤にハンティングのシーンがあるのですが、これがやたら詳しく描写されています。

狙う獲物は「コリンウズラ」という鳥ですが、聞いたことがなくイメージが湧かないので調べてみました。



Wikipediaによれば、

全長20-25cmと、ウズラより一回り大きい。背中から胸、腹は赤褐色で、羽の縁は白色または黒色である。

ということですが、良く考えたら、あの、「ウズラの卵」のウズラがどんな鳥かも知らないことに気が付きました。



で、こちらがウズラ。

まあ、どうでもいいことですが、読みながらそのシーンをリアルに思い描こうと、知らないものはつい調べてしまう私。

困ったモンです。

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文庫の表紙は、乾いた土とドロドロの土が混じり合う地形の風景ですが、内容と同じように、分かったような分からないような表紙です。

 

洋書版は、ハードカバー(左)が街の夜景を見下ろす男の姿?で、ペーパーバック(右)は、銃の的と人間のシルエットのようなもの。

原題が「triggerman's dance」ということで、「triggerman=プロの殺し屋」をイメージしたのでしょうか?

いずれにしても、こちらもあまり内容と合っているとは思えない表紙です。


印象に残った言葉

「処罰を考えているのか?」

「当然さ。それがわたしの仕事だ。」

「復讐を考えたことは?」

「ああ、しじゅうだ。」
「正義はやつの命を要求する。復讐もやつの命を要求する。いずれを選ぶかは好き好きだ。」

「あんたの選択は?」

「どちらでもない。犯罪の種類はどうであれ、被害者の行き着く先はみな似たようなものだ。正義とは国家の法律であり、復讐は人間の法律だ。二つが分かちがたく噛み合っていることもある。」


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元FBI捜査官が、セキュリティー会社の裏で行っている「私設警察」のようなもの。

正義か復讐か?

それとも、正義の名を借りた復讐か?

本の内容と違うとは思いますが、先ごろ被告の死刑が確定した、山口の母子殺害事件の本村洋さんの言葉、


司法に絶望しました。控訴、上告は望みません。早く被告を社会に出して、私の手の届くところに置いて欲しい。

私がこの手で殺します。



これを思い出しました。



※ブログ内の関連記事(T・ジェファーソン・パーカー)

T・ジェファーソン・パーカー / 著作リスト

(ブックレビュー)
ラグナ・ヒート
流れついた街
凍る夏
渇き

※関連サイト

T・ジェファーソン・パーカー(T. Jefferson Parker)公式サイト


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