ブラディ・ローズ (今邑 綾)


満足度3.5 ★★★☆

創元推理文庫
初出版 1990年
読んだ回数 1回







創元推理文庫-裏表紙の紹介文

美しい薔薇園に包まれた邸に相澤花梨は嫁いだ。二番目の妻良江が謎の死をとげた直後。邸には主の苑田俊春のほか、足の悪い妹、家政婦、お手伝い、園長が住む。最初の妻雪子への思慕が邸内に満ちる状況下で、早々と三番目の妻花梨に向けられる何者かの憎悪! あなたは雪子になれない、良江の二の舞、と告げる脅迫状が次々届けられる。華麗にして残酷なロマンティック・ミステリ。


感想、みたいなもの

「卍の殺人」でデビューした今邑彩の第二作目です。

「ルームメイト」で今邑彩がとても気に入り、「最初から全部読む」ことにした私ですが、この「ブラディ・ローズ」はすでに絶版になっていたので、amazonの中古品を昨年2月に購入しました。

ところが、積読でいるうちに、今邑彩に力を入れている中公文庫から復刊されることとなり、さて、どちらを読もうかと思ったのですが、760円払ったこともあり、今回は創元推理文庫版を読みました。(もちろん、中公文庫版も応援購入。こちらは再読時に読むことにします。)

-----

ということで読み始めた「ブラディ・ローズ」ですが、今邑彩独特の、ホラー風味たっぷりな文章によるミステリアスな雰囲気を、本作でも堪能することができました。

今邑彩は、ミステリーの王道ともいうべき、「非日常的な舞台」を設定して物語を進めるという、古典派(ある意味正統派)の作風なのですが、本作でも、

妻を二人亡くした苑田家へ嫁ぎ、美しい薔薇園を持つ屋敷での生活を始めた花梨の元に届く脅迫状。

屋敷に住む、車椅子の妹、家政婦、お手伝い、薔薇園の園長といった、怪しげな人々。そして、最初の妻、「雪子」の影がちらつく。


というように、何かが起きそうなミステリアスな雰囲気を作りあげ、じわじわと読者を不安な気持ちに追いこんで行く筆力は相当なものだと思います。

ただ、読み始めは★★★★★を期待させる感じだったのですが、謎解きの見せ方が今ひとつで、満足度としては★★★☆となりました。

プロット自体は面白いのですが、ラストの衝撃度が低いというか、鮮やかさが足りない感じがしました。

先に書いたように、「じわじわとした不安感」は良いのですが、ラストも何となく余韻残しの、どっちつかずに終わった感じで、最後までスッキリ解放されませんでした。

良く考えると、今まで読んだ作品も同じような感じで、「余韻残し」というのは今邑彩の特徴なのだと思いますが、もう少しドラマチックさがあった方が、一般受けすると思います。

とは言え、非日常の世界に浸れる今邑彩の雰囲気、私は大好きです。

----------

さて、本作では全編通じて「薔薇」の描写があり、読んでいても薔薇の香りが漂ってくるような気がします。

今、東京の生活で、日常、薔薇の姿を見ることは多くはありませんが、札幌にいた時は、6月ともなれば、札幌のオアシス「大通公園」12丁目にあるバラ園に、良く足を運んだものでした。



駅前通りに面する「3、4丁目」を訪れる観光客の方は多いですが、西の最深部、12丁目にあるバラ園は、あまり知られていないと思います。

種類も多く、バックに札幌資料館を見るその景色は、絵になる景色で素晴らしいものなので、バラの季節に札幌を訪れた時は、是非、足を延ばしてもらいたいと思います。



そして、「札幌のバラ」と言えば、まず真っ先に浮かぶのが「ちざきバラ園」です。



伏見の高台にあるので、バラを観賞しながら、眼下に札幌の街並みを臨むことのできる、超オススメ観光スポットだったのですが、「だった」と過去形で書いたように、私が札幌を去った2009年の秋、入場者減などにより閉園してしまいました。



ここも大好きな場所で、毎年、訪れていましたが、本当に多くの種類のバラの花が咲いていたことを思い出します。

-----

また、バラは気品があることからか、高貴な方の名前がつけられることが多い花だと思います。


プリンセス・ミチコ(美智子妃)


プリンセス・マサコ(雅子妃)


プリンセス・アイコ(愛子妃)


プリンセス・オブ・ウェールズ(ダイアナ妃)

といった馴染みのある方々のバラですが、それぞれ、イメージに合った雰囲気のバラだと思います。

本作でも、最初の妻「雪子」をイメージした「ユキコ」という品種が登場するのですが、調べてみると、実際に「ユキコ」というバラがありました。



これがそうですが、

純白に淡いピンクのぼかしが入った、ひときわ美しいバラだった。

という文中の記述とは異なり、つぼみは白でも、花はピンクのものでした。



こちらは、花梨の好きなバラとして名前が登場する「ピース」。

バラは品種がとても多く、とても覚えきれませんが、やはり、その姿をイメージしながら読むと、作品の雰囲気をより深く味わえるのではないかと思います。

----------



ロンドン橋、落ちた。
落ちた。落ちた。
ロンドン橋、落ちた。
マイフェアレディ……


文中、花梨が口ずさんだ曲ですが、どんなメロディーだったか曖昧だったので調べてみました。





何だか、「メリーさんのひつじ」とメロディーが似ているようですが、こんなYouTubeもありました。



「ロンドン橋落ちた」は、「マザー・グース」の中でも代表的な歌とのことですが、やはり歌詞の解釈には謎めいた部分もあるようで、本作の中でも、ミステリアスな雰囲気作りに貢献しているように思いました。

---------------



文庫の表紙(左)は、今邑彩のミステリアスな雰囲気にピッタリな作風で、私の一押し、北見隆氏のものです。

カッパノベルス版(右)では、タイトルが「悪魔がここにいる」と改題されましたが、表紙は変わらず北見氏によるもので、どちらも薔薇の花の上に、館や人物を乗せるというパターンです。




昨年、「卍の殺人」が中公文庫から復刊された時の記事に、

創元推理文庫から出版されていた、デビュー第二作目の「ブラディ・ローズ」も復刊してくれるものと期待してしまいます。

と書いたのですが、期待を裏切ることなく、「ブラディ・ローズ」を復刊してくれただけでなく、中公文庫で絶版となっていた「盗まれて」も復刊してくれました。

もちろん、両者とも北見隆氏の表紙!

「ブラディ・ローズ」は、旧版の「薔薇の花の上に~」というパターンではなくなりましたが、描かれている館が旧版のものを踏襲しているところがニクイです。

また、夕焼けのような薔薇色の空が綺麗ですが、血の色のような不気味な雰囲気も感じさせ、良い出来だと思います。


印象に残った言葉

赤いビロードの椅子に座ったビスク・ドールが、とがめるような鋭い視線を私に向けていた。百年も生きているような眼をしている。見つめていると魂を吸い取られそうだ。蒼く冷ややかな目。深く鋭い、ゆっくりと流れる時間を見すえている眼だ。

-----

ビスク・ドールがわからなかったので調べてみると、



ゴムやセルロイド製の人形が登場する前の19世紀ヨーロッパで流行した、陶磁器人形

ということですが、「人形」というのは、ホラー系ミステリーの小道具としては、定番中の定番ですが、西洋だけでなく、日本人形も、「髪が伸びたり」、怖さでは負けていません。

本作でも、

雪子は前髪を眉のあたりで切り揃えた、市松人形のような髪形をしていたという。

といった記述がありましたが、



市松人形にしてもフランス人形にしても、部屋に置いてある、もうそれだけで怖い感じがしますが、こういうのを部屋に飾っている人は、怖くないんですかねぇ?



※ブログ内の関連記事(今邑彩)

今邑彩 / 著作リスト

(ブックレビュー)
卍の殺人
ブラディ・ローズ
ルームメイト

警視庁捜査一課・貴島柊志シリーズ
i(アイ)鏡に消えた殺人者


※ブログランキング(本・読書)に登録しています。
画像:人気blogランキング(本・読書)へ
↑↑読書ライフの参考になりましたら、応援のクリックをお願いします。


↓↓本の購入・ブックレビュー(amazon)はこちらへ
 

この記事へのコメント