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zoom RSS 大延長 (堂場瞬一)

<<   作成日時 : 2011/08/22 19:04   >>

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満足度3 ★★★

実業之日本社文庫
初出版 2007年
読んだ回数 1回








実業之日本社文庫−裏表紙の紹介文

最後に勝つのはあいつか俺か。
甲子園の夏はまだ終わらない。

効率の進学校・新潟海浜と、私立の競合・恒正学園との夏の甲子園決勝戦は延長15回でも決着がつかず、再試合にもつれこんだ。両チームの監督は大学時代のバッテリー。中心選手はリトルリーグのチームメイト。お互いの過去と戦術を知り尽くした者同士の壮絶な闘いの中で、男たちの心は大きな変化を遂げていく――野球を愛するすべての人に贈る、感動の傑作長編。


感想、みたいなもの

実業之日本社文庫・堂場瞬一スポーツ小説コレクション第四弾。

今年の1月に読んだ「チーム」は正月に行われる箱根駅伝の物語ですが、開催時期に合わせ、昨年12月に出版されました。

同じように、高校野球の夏の甲子園大会を題材にした「大延長」も、6月に刊行されたので、やはり夏に読むのが旬とばかりに、甲子園大会の開催中に読んでみました。

「チーム」には、いたく感動し、「8年」もまずまずの出来だったので、ネットでの評判も高かった「大延長」も期待して読んだのですが、私にはイマイチでした。

もちろん、普通に楽しめるレベルにはあったのですが、野球そのものより、関係者の裏事情の記述が多すぎる感じで、もっと試合そのものを描いて欲しかった気がしました。

タイトルの「大延長」で分かるように、夏の甲子園大会の決勝戦引き分け→再試合が物語の舞台です。


「決勝戦引き分け→再試合」と言えば、記憶に新しいのが、2006年大会の「早稲田実業 対 駒大苫小牧」の試合です。



ハンカチ王子として、一躍スターダムにのし上がった「斎藤佑樹」の早稲田実業と、



マー君こと「田中将大」率いる駒大苫小牧の2日間にわたる激闘は、これぞ甲子園という試合で、当時、北海道にいた私も、TVに釘付けで試合を見ていたのを思い出します。

「大延長」が書かれたのは2007年ですから、堂場瞬一も、この試合をヒントにしたのは明白で、作中の設定も、かなり似通った部分がありました。

「お前をここで潰すわけにはいかない。」

「今日投げたぐらいじゃ潰れませんよ。」

「俺も潰れた人間だ。だから分かるんだよ…潰れた後のこともな。きついぞ。何も残らないんだぜ。」

「残す必要があるんですか。」

「ある。お前は上に行く人間だ。」

「そんなことより、このチームで勝つことの方が大事です。今勝ちに行かなくてどうするんですか。」


引き分けとなった決勝戦で15回を投げ抜いたエースの牛木は、膝の故障で1年を棒に振り、3年で復活したばかり。監督の羽場は、決勝再試合では投げさせないことを決めます。

実は監督の羽場も、大学野球で無理をして、その後の野球人生を失った経験の持ち主という設定です。

確かに、プロ入りを期待された投手が甲子園で無理をして、その後、消えていくこともあると思います。

もちろん、無理をさせることを奨励するわけではありませんが、プロでも、選手の身体を考え、「100球投げたら交代」といった流れには、何となくシラける気持ちもあります。

あの夏、延長15回を一人で投げ抜き、4連投となるのに先発してきた斎藤祐樹と、決して体調が良くなかったとは言え、先発しなかった田中将大では、(結果論を承知で言えば)、最初から勝負は決まっていたのかもしれません。

最も、田中将大が、あそこで無理をしていたら、今の活躍はなかったかもしれません。(野球の)神のみぞ知るです。

−−−−−−−−−−

「チーム」では、まず、選手たちの個々の事情を描き、それをレースシーンと巧く融合させ、スポーツの持つ魅力を巧く表現した堂場瞬一ですが、本作では、設定自体が不自然というか、わざとらしい感じで、物語の世界に入り込めませんでした。

・あくまでも純粋な地方高校の選手たち。

・野球留学した超高校級のスター選手の傲慢さ

・優勝請負監督として、自分を高く売ることしか考えない監督

・自分も無理をして選手生命を失ったことから、選手に無理をさせないことばかり考える監督

・逆に、千載一遇の優勝のチャンスに、無理をさせてでもエースの登板を迫るOB会の面々


このような善玉と悪役の設定が、「いかにも」という感じで、しかもそれが、物語の前半で延々と続きます。

そして、試合のシーンには深みがなく、都合良くストーリーが展開するので、これが甲子園じゃなかったら、シラけるかもしれませんが、過去に甲子園では、信じられないようなことが、何度も起こり、実際にそれを私も目撃してきました。

従って、作者の筆力ではなく、甲子園大会そのものの力を借りて、成立している作品という感じでした。

やはり、堂場瞬一をもってしても、神がかり的な奇跡を呼ぶ、甲子園の魔力を描ききることは簡単ではなかったのだと思いますが、堂場瞬一には、いつかまた、甲子園の物語にチャレンジしてもらいたいと思います。

−−−−−−−−−−

野球留学生。特待生。何の意味があるのか。

大阪や東京のように出場校の多い場所にいれば、確かに甲子園への道は狭くなる。だけど、チャンスが大きくなるから田舎の高校に進むっていうのは、やっぱり変じゃないか。


新潟代表・海浜高校は、野球留学のない学校で、一方の恒正学園は選手を強化しているという設定。

堂場瞬一は、海浜高校の選手に上記のようにつぶやかせているのですが、「だからどうなんだ」という結論めいたことまでは掘り下げて書いてはいませんでした。


今年の甲子園の決勝まで駒を進めた、青森県代表の光星学園。

本書に登場する強豪校で、野球留学生のいる高校の名前が「恒正学園」というのも不思議な一致ですが、光星学園も野球留学に力を入れている学校で、ベンチ入りした18人中10人が大阪出身者で、青森県出身者は3名。監督も大阪出身でした。

『地元八戸でも「青森の子たちじゃないし」と、勝ち進んでも、冷ややかな目で見る人もいた。』とも報じられているように、甲子園が、都道府県の戦いという図式は、とうの昔に崩れています。

こういった、甲子園の矛盾についても、堂場瞬一は描こうとしたようですが、結局、あれもこれもと欲張り過ぎで、焦点が定まらなかったような感じでした。


…と書いてアップしようとしていたところ、

★決勝の2日後、準優勝の光星学園のレギュラー3選手の飲酒が発覚!






普通は、週刊誌に飲酒、喫煙の写真を撮られてしまうというパターンが多いですが、今回は、自分で自分の携帯サイトに書き込みしていたらしい。

アホ過ぎる!!

野球留学だけでなく、不祥事についても堂場瞬一は物語の背景に盛り込んでいました。

ある意味、堂場瞬一もビックリの展開ですが、不祥事、これもまた甲子園です!!

まだまだ甲子園の夏は終わらない!

−−−−−−−−−−

先日、「孤狼」の感想で、「紛らわしい名前はやめた方がいい」ということを書きましたが、何と、堂場瞬一は、またしても、「君(きみ)」という選手を登場させていました。

新潟県代表のチームの選手なのですが、結構、頻繁に登場し、

「続けよ、君!」

監督は君の名前を呼んだ。

打席を外した君が、驚いたようにダッグアウトを見る。

君も慎重に粘った。


等々、鬱陶しくてなりませんでした。

「雪虫」にも「君(きみ)」という人物が登場するのですが、もしや新潟に「君(きみ)」姓が多いのかと思い、ちょっと調べてみたのですが、そういう事実はないようでした。

何で、こういうことをするんでしょうね。

本当に、やめて欲しいです。

−−−−−−−−−−

「大延長」ということで、過去の甲子園大会での延長の名勝負を探してみました。

YouTubeもいくつかリンクしておきますが、やはり甲子園は奇跡を見せてくれる場所ですね。


(参考サイト)
高校野球の総合情報サイト (朝日新聞社)



※2006年決勝 (駒大苫小牧 - 早稲田実業)




甲子園2006決勝 駒大苫小牧−早稲田実業


甲子園2006決勝2日目 駒大苫小牧−早稲田実業


早稲田実業 斎藤佑樹


2006 全国高校野球 決勝再試合 対決の裏側



※1979年3回戦 (簑島 - 星稜)


昭和54年夏 甲子園 箕島VS星稜 灼熱のマウンド 1/4


奇跡を超えた名勝負 箕島vs星稜 1



※1996年決勝 (松山商 - 熊本工)


【ノーカット】'96夏決勝 松山商−熊本工(1/6)


松山商業 奇跡のバックホーム


熊本工対松山商 10回裏 奇跡のバックホーム Hi-Vision



※1998年2回戦 (豊田大谷 - 宇部商)


豊田大谷vs宇部商 サヨナラボーク



※1969年3回戦 (松山商 - 三沢)




延長18回の伝説 松山商×三沢 (1/5)



※その他、甲子園の面白さ、素晴らしさ、怖さがわかる動画集

甲子園の見た夢 1/8


全国高校野球 決勝戦ラスト@(1975〜78年&85年)


全国高校野球 決勝戦ラストA(1979〜84年)


汗と涙の熱闘甲子園  (名勝負・名投手編)


高校野球名場面@ 「恐るべしPL学園、松山商、横浜、大阪桐蔭、池田etc」


【懐かしの甲子園】 沖縄水産 大野倫


−−−−−−−−−−−−−−−

 

表紙は単行本(右)と、ほぼ同じです。

無理して変な表紙にするくらいなら同じで良いと思いますが、わざわざ「堂場瞬一」の名前を、グラウンドに移動した理由は何なのでしょう?

単行本と同じレイアウトで良いと思いますが、文庫に帯を付けると著者名が隠れてしまうからでしょうか?


印象に残った言葉

「たぶん俺は、野球そのものよりは小さいんだ。」

−−−−−

試合の終盤、ある登場人物がこう思います。

いろいろな人間事情、それぞれの思惑、キャラ設定に込められた作者の狙い。

高校野球にも、純粋とは程遠いものが存在することも事実ですが、それらを含め、全てが小さなことだと思わせるのが、甲子園の雰囲気なのです。

今年は会社の盆休みと重なった関係で、いつになく多くの試合を見ましたが、やはり、何かしら心を震わせるシーンを見せてくれる甲子園大会。

やはり日本の夏に、なくてはならない存在だと思います。





※ブログ内の関連記事(堂場瞬一)

堂場瞬一 / 著作リスト

(ブックレビュー / スポーツもの)
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チーム

※関連サイト

堂場瞬一10周年記念特設サイト
堂場瞬一 with 中央公論新社


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