ゴールデンボーイ (スティーヴン・キング)


満足度3 ★★★

新潮文庫
原題 Different Seasons
★Rita Hayworth and Shawshank Redemption
★Apt Pupil
翻訳 浅倉久志
初出版 1982年
読んだ回数 1回





新潮文庫-裏表紙の紹介文

明るい性格、成績良好。何不自由なく暮らす13歳の少年トッドは夏休みのある日、誰も知らぬ秘密を胸に近所に住む老人の家へと足を踏み入れる。老人は、ナチの戦犯だったのでは? 少年と老人の奇怪な交流を描いた「ゴールデン・ボーイ」、無実を主張しながらも刑務所入りした男の運命が胸を打つ、名画「ショーシャンクの空に」原作、「刑務所のリタ・ヘイワース」の傑作中篇2篇を収録。

感想、みたいなもの

ホラー作家として有名な「スティーヴン・キング」による、ホラー以外の作品。

元々は、原題が「Different Seasons(それぞれの季節)」というように、季節ごとの四作の中編集として出版されたものを、春夏(上)、秋冬(下)と分けて文庫出版されたとのことです。

邦題の副題として「恐怖の四季」とあるのですが、ホラー作家キングということで無理矢理つけた感じで、特にホラー小説ではありません。

四作は、

春-刑務所のリタ・ヘイワース / 春は希望の泉
夏-ゴールデン・ボーイ / 転落の夏
秋-スタンド・バイ・ミー / 秋の目覚め
冬-マンハッタンの奇譚クラブ / 冬の物語

ですが、映画「ショーシャンクの空に」の原作となった「刑務所のリタ・ヘイワース」と、やはり映画化された「ゴールデン・ボーイ」の中編二作が春夏編として収められています。

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「ショーシャンクの空に」は何度も観て、とても好きな映画なのですが、原作がキングだと知ったのは、わりと最近のこと。しかも、「スタンド・バイ・ミー」の作者と同じということを知って、かなり驚いた記憶があります。

それだけ、私も「スティーヴン・キングと言えばホラー」だと思いこんでいたということで、ホラーは敬遠気味の私としては、ノーマークだったのです。

今回は「刑務所のリタ・ヘイワース」を読むのが目的だったのですが、何故、読もうと思ったかと言うと、昨年「探偵はBARにいる」のキャストに不満を持ち、そのことをブログに書いたところ、「原作のイメージに近い雰囲気、容貌の俳優を配して成功した映画を、少なくとも私は知りません。」というコメントをもらったことにあります。

「原作が素晴らしければ、わざわざキャストのイメージを変更する必要はない。」というのが私の考えなので、それなら、あの感動的だった「ショーシャンクの空に」は、原作のイメージと違うのか、検証してみたくなったのです。

キングの作品は、かなりの数が映画化されていますが、キングは、映画化の際、ストーリーを変えられたりすることを好まない作家で、「シャイニング」の映画化では、あのスピルバークの脚色が気に入らず、自分で監督をして作り直したこともあるという人です。



結論から言うと、映画は、ストーリー的にも原作にかなり忠実に作られていて、原作のイメージをまさに具現化した映画であったことを確認できました。

もちろん、映画を観る前に原作を読んだわけではないので、最初に原作で抱くイメージがどのようなものであったかの確認はできませんが、読んでいて全く違和感はなく、「原作のイメージに近い雰囲気、容貌の俳優を配して成功した映画」だと確信しました。

もう一作、有名な「スタンド・バイ・ミー」は、話は大体知っていますが、映画を観たことはないし、原作を読んだこともないので、次は、秋冬編を読んだ後に映画を観てみようと思います。

また、「ゴールデン・ボーイ」も映画化されているとのことなので、こちらも観てみたいと思いますが、こちらは、原作の内容に感動したわけではないので微妙なところですが…。

さて、話を「刑務所のリタ・ヘイワース」戻すと、無実の罪で刑務所に入れられたアンディー・デュフレーンが、刑務所の中でも決して誇りと希望を失わず、精一杯の努力をしていくという話です。

挫折の中にも希望を失わないアンディー、そして、長い刑務所暮らしで希望という言葉を忘れ、逆にそれを恐れているかのような「調達屋」のレッド。

二人が刑務所の中で知り合い、その友情?を、そして希望に対するレッドとの対比を描き、感動的なラストへと物語は走ります。

正直なところ、本を読んだだけでは、映画を観た時のあの感動は味わえないかもしれませんが、「原作をフォローする立場を崩さず、原作の持つ意味を映像として表現」した、素晴らしい作品だと思います。

「映画と原作は別物」という言葉を良く聞きますが、「刑務所のリタ・ヘイワース」と「ショーシャンクの空に」に限り、そんな言い訳をする必要もない、理想的な関係だと思いました。

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「刑務所のリタ・ヘイワース」というのは、アンディーが、調達屋のレッドに依頼して手に入れ、監房の壁に貼ったポスターのことですが、刑務所内で行われた映画鑑賞の際に依頼したことから、「ギルダ」のポスターかと思っていたのですが、

リタの服装は海水着一枚で、片手を頭のうしろに当て、両目は半分つむり、あのふっくらとした、拗ねた感じの唇を半びらきにしている。



という記述があるので、水着のポスターということです。

何となく、最初から最後まで「リタ・ヘイワース」で通した印象でしたが、実はその後、ポスターは変遷を重ねていきます。

文中の記述によると、



おれの記憶が正しければ、リタ・ヘイワースは1955年までアンディーの監房に貼ってあった。それからマリリン・モンローになった。「七年目の浮気」で、地下鉄の通風孔の上に立って、風邪でスカートがまくれているあの写真だ。



マリリンは1960年まで続き、ポスターの縁がボロボロになってきたところで、アンディーがジェーン・マンスフィールドに貼りかえた。ジェーンは、はっきりいうなら、ミルクタンクだった。



1年かそこらして、ジェーンはだれかイギリスの女優に取り換えられた――ヘイゼル・コートだったかもしれないが、確かじゃない。



1966年にはそれがはずされて、ラクエル・ウェルチが登場し、アンディーの監房の中で六年間という記録破りの長期興行を打った。



最後にその壁を飾ることになったのは、リンダ・ロンシュタットという、かわいいカントリー・ロックの歌手だった。


ということで、最後はリンダ・ロンシュタットだったということですが、映画はそうではなかったような…今度また映画を見て確認しなければ。



リンダ・ロンシュタットは、私もLPを買ったことがあり、わりと好きな歌手なのですが、実は、私の中では、サラ・パレツキーの「ヴィク」こと、「V・I・ウォーショースキー」のイメージが彼女なのです。

まあ、どうでもいいことですが…。

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もうひとつの作品「ゴールデン・ボーイ」ですが、13歳の少年が、ふとしたことから、ナチスの強制収容所にいた戦犯を見つけ、そのネタで脅しつつ、老人から残虐な話を聞き出すうちに自らの感覚がマヒしていくという話。

ダラダラと話が続く感じで展開が読めなかったのですが、読んでいるうちに、真綿でじわじわ首を絞められるような、息苦しく、不気味な感じに包まれていきました。

「刑務所のリタ・ヘイワース」が「希望」なら、「ゴールデンボーイ」は「絶望」とでも言えるような、人間の中にある「残酷性」を描いた作品です。

こちらは、ホラー風味もありますが、そもそもホラーが好きな人の中には「残酷性」が潜んでいるのかもしれません。

強制収容所の司令官という過去と決別したはずの老人が、当時の快感を思い出して行き、少年との力関係が微妙に変化していく描写は静かな恐怖感を持ち、まずまず普通に楽しめましたが、少し冗長に過ぎる感じはあるかもしれません。



「ゴールデン・ボーイ」も映画化されていますが、映画では結末が変わっている(衝撃的過ぎるかららしい)とのことですが、こちらもいつか観てみたいと思います。

原題の「Apt Pupil」は、日本語にすれば、「頭の良い生徒」「出来の良い生徒」という感じになると思いますが、「Good Student」でも良さそうなところ、あまり馴染みのない(日常会話では一般的なのかもしれませんが…)「Apt」や「 Pupil」という単語を使った意図は、何かあるのでしょうか?

私にはわかるはずもありませんが、邦題の「ゴールデンボーイ」は何となく、感覚的に、「Apt Pupil」の意を正しく伝えていないと思いますし、何と言うか、邦題としてのセンスがない気がしました。

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文庫の表紙はゴールデンボーイの少年トッドが自転車で老人の家を訪ねるシーンです。

細かく書き込んだ写実風のイラストはいい感じですが、amazonのリンクでは、別の表紙(右)になっています。



セットになっている「スタンド・バイ・ミー」の表紙に合わせて2010年に変更されたようですが、本来、春夏編の「ゴールデンボーイ」の方が先のはずですが、こちらが「Vol.2」となっていて、「スタンド・バイ・ミー」が「Vol.1」となっています。

解説に「諸般の事情により、刊行の順序が逆になったが」とあり、想像するに、映画「スタンド・バイ・ミー」が1986年なので、それに合わせてそちらを先に出したということだと思います。

なお、それまでにも、何度か表紙が変わっているようですが、



不思議なのは、より有名と思われる「刑務所のリタ・ヘイワース」ではなく、「ゴールデン・ボーイ」が本のタイトルになっていること。

文庫化された1988年当時は、まだ「ショーシャンクの空に」が作られておらず、とりあえずページ数の多い「ゴールデン・ボーイ」の方をタイトルにしたのだと思いますが、「刑務所のリタ・ヘイワース」にしておけば、もっと売れたのではないでしょうか?

これでは、「ショーシャンクの空に」の原作だとは、気がつきにくいですからね。



洋書の表紙がこちらですが、やはり本国でも「ホラーのキング」のイメージで作られているようです。


印象に残った言葉

希望はいいものだ、たぶん何よりもいいものだ。

そして、いいものはけっして死なない。


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やっぱりアンディーのこの言葉でしょう。

ただ読むだけなら何て事のない言葉ですが、本を読み終えてからこの言葉を聞くと、ぐっと胸に迫るものがあります。

一度は夢がかなって北海道に住むことができたものの、結局、東京に戻らざるを得なかった私ですが、原作を読み、改めて、「希望」を持ち続けなければいけないと思いました。

アンディーのように。



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